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公団住宅を公共住宅として守ろう 家賃値上げ反対!高家賃の引き下げ
2010年全国公団住宅居住者総決起集会

基調報告…多和田栄治代表幹事
Ⅰ 当面する最大の課題—国交副大臣交渉の状況
 当面する最大の課題、民主党内閣は、来年4月の機構の家賃値上げを中止させるのかどうか、公団住宅売却・民営化について最終的にどういう政治判断をくだすか、この2つの問題にしぼって報告します。
 機構は、家賃値上げ「延期」を打ち切り、来年4月に値上げを実施すると発表しました。ちょうど2年前、機構の値上げ計画は、私たちの運動と全政党のご協力で当時自民・公明内閣の金子国交大臣から「厳しい経済状況を考慮せよ」との要請をうけ、当面延期となりました。
 今回の機構の値上げ発表にたいしても私たちは、生活は依然きびしく、値上げは中止、高家賃引き下げを要求して、馬淵国交大臣に要請しているところです。大臣には、問責問題があるせいか、自治協としてまだ直接お目にかかれませんが、12月2日に全国自治協は、民主党議連の石毛鍈子新会長、小宮山泰子幹事長ら5名の衆議院議員とともに池口修次副大臣へ、家賃値上げの見合わせを申し入れました。予想以上にそっけない対応でした。
 副大臣は「機構の赤字を増やさないためにも料金引き上げはやむを得ないのではと思う」「高齢者や子育て世帯への配慮もしている」と、機構か国交省の言い分そのままの返答でした。政治主導とは思えず、役人いいなりを強く感じました。民主党の議員さんたちが「自公政権が値上げ見合わせをさせたものを民主党が解除して値上げを認めたら、えらいことになります。来年の地方選挙は負けます」と懸命に要請してくださったのにたいし、副大臣は「それとこれとは違う」との対応でした。
 「えらいことになる」のは、私たちの生活、公団住宅の行く末です。しかし、まだ馬淵大臣の意向はきちんと伺っていないし、期待をもち、きょうの集会の盛り上がりを背景にさらに要請を強め、少しは安心してお正月を迎えられるよう頑張りたいと思います。

Ⅱ 機構の家賃値上げ—継続家賃の改定は契約当事者の事情を第一に
 さて機構は今回、延期中止、値上げの理由について、2年間の値上げ見送りで30億円減収になった、この間経済事情は改善したとの2つをあげています。
 2年間で30億円の減収と言いますが、昨年、一昨年の決算書をみると、家賃収入は毎年5600億円台。これにたいし 800億円を超える事実上の純利益を上げています。1割以上の空き家を放置していても14%近い純利益。全世帯の家賃を一律1割下げても空き家をなくせばまだ利益が十分残るほどの高家賃です。家賃を上げ修繕費等を年々削って溜め込んだ利益は何に使っているのか。機構全体の利益のほとんどは家賃収入からの利益ですが、その利益のかなりの部分を、ニュータウン事業や再開発部門の赤字の穴埋めに使っていることは、決算書からも明らかです。
 家賃を上げないと機構の赤字が増えるとばかりの機構や国交省の言い方は、デマというべきで、それを副大臣の口からも聞くと悲しくなります。また、高齢者等には配慮している、特別減額措置があると言われ納得しているようですが、その中身が分かっているのか。支払い家賃から1円だって決して減額はしない措置であるとは機構も説明していないと思います。
 もう一つの値上げ理由として機構は、経済状況が改善したといい、4つの証拠をあげています。2年前より平均株価が 2,315円上がった、完全失業率が0.6%下がった。有効求人倍率が上がり、求職者 100人に42人の求人から今では56人に増えた。大企業の景気指数がよくなった、というのです。
 この4つの数字をあげて、経済状況はよくなった、だから家賃を上げると機構がいい、これを民主党内閣はもっともだと家賃値上げを認めるのでしょうか。
 問題は継続家賃の値上げです。これから入居する人の募集家賃とは違います。契約をして住んでいる者が払う家賃の改定です。契約の変更ですから、大家と店子の契約当事者間の協議、相互理解が必要です。契約変更の際、何より重視すべきは、当事者おたがいの事情です。肝腎の居住者の生活、支払能力の実情を無視して、株価が上がったとか、大企業が儲かっている等を理由に、そのうえ、家主は赤字のデマまで流して、公的機関が家賃を値上げし、監督する政府がこれを認めるとすれば、世も末、背筋が寒くなる思いです。
 何としても、まずは家賃値上げを中止させ、高家賃引き下げに合わせ、安心して住みつづけられる家賃制度への転換を実現させましょう。

Ⅲ 混迷する暴論—国が責任をもつ公共住宅政策の確立を
 つぎは公団住宅はどうなるかの大問題です。
 行政刷新会議は本年4月の事業仕分けで、都市機構の賃貸住宅について「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行、市場家賃部分は民間に移行」と判定しました。機構は市場家賃、と言っても客観的なものではなく機構が決めた基準ですが、それより低いといって差額分を値上げしているように、公団住宅はすべてが原則「市場家賃部分」、仕分けによれば民営化の対象になります。他方で現実は、大半の団地で高齢者・低所得者が過半数を占めており、また、いま地方自治体はこれを受け入れる状況にはありません。仕分け人たちは、これを知ってか知らずか、政策見通しもない、無責任きわまる判定をくだしました。
 仕分け結果をうけて当時の前原国交大臣は、この結果にもとづいて政治判断をくだすとし、何よりも10兆円の負債解消と資産売却を急ぐことを強調しました。
 仕分け結果を踏まえて都市機構のあり方を最終判断するために国交省内に「あり方検討会」が設けられ、検討会は10月1日に報告書を発表しました。報告書では検討結果として機構組織の見直し案、ABCの3案を提案しています。
 機構のあり方検討会の共通の認識は、次の4点に集約できます。
①公団住宅本来の役割は終わった。高齢者向け住宅も民間が供給促進すべきである。
②最大の急務は債務の圧縮、繰り越し欠損金の早期解消。そのために家賃収益の増大とともに、コストの削減、業務の効率化に努めよ。
③都市再生部門はひきつづき民間事業、都市整備を支援する(ニュータウン事業等での収支欠損には賃貸住宅部門の収益を充てる)。
④高齢者・低所得者の居住の安定に配慮する。ただし家賃減額措置など既存入居者への過度な既得権的優遇は行うべきでない。
 概ねこの基本認識に立ってABCの3案がまとめられました。
 A=機構を完全民営化する案
 B=政府 100%出資の特別会社にする案  C=新しい公的法人(公的機関)にする案
 これら3案は、いずれの案を選択するか提案された個別の3案ではなく、本来の目標はA案と定め、Aにいたる段階としてC案、つぎにB案がセットで出されていると見るべきです。なお居住者の居住の安定に配慮が必要と報告書の最後に書いてはいますが、そのための具体的方策、制度的対応については、完全民営化のA案は当然として、B案、C案のどこにも書かれていません。
 この報告書についての10月5日の馬渕国交大臣のコメントは、報告書の執筆者が下書きしたのかと錯覚するほど、端的に要約されています
 大臣コメントは、機構改革の最重要課題は、10兆円を超える債務の削減だといい、そのために収益を上げろとハッパをかけます。民営化か事業廃止を急ぐのでしょうか?その障害になる債務を減らせ、累積赤字をなくせ、機構資産の大半を占める賃貸住宅を売って現金に換えろと迫っています。
 では、なぜ今の独立行政法人ではダメで、新たな公的法人に変える必要があるかといえば、今のままでは利益を最大化する動機に欠けているからと言います。そのために、まず機構を改革して新法人に変え、次に特殊会社にする、つまりC案、B案の順を考え、機構見直しの工程表を今年度内に策定するとコメントしています。
 以上述べた都市機構、国交省、内閣の一連の報告、論点、方針に見られるのは、収益を上げよ、賃貸住宅を削減して民間に移せとあおり、驚くことに、政策的意義とか非営利の考えは非効率の元とまで言い切っています。国民の居住の安定・向上をめざす住宅政策の立場、理念はどこにも見えません。
 私は、4月の仕分け結果と、10月の機構あり方検討会の報告書との間に、本質は同じでも若干ニュアンスの違い、仕分け結果にたいする国交省官僚の巻き返しのようなものが感じました。与党内でも仕分けへの批判、再仕分けの動きがあると報じられています。仕分け結果には法的拘束力がなく、巻き返しを恐れてか、行政刷新会議(議長は菅首相)は11月26日になって「独立行政法人の事務事業見直しの基本方針」を決め、年内にも閣議決定し、正式の政府方針にすると、日経新聞は報道しています。
この基本方針は、機構賃貸住宅について、4月の仕分け結果を目標に、具体的には、現在機構がすすめている団地再編・売却方針の元になった小泉構造改革以降の規制改革路線に近く、来年、2011年度から実施するとし、実施に際しては、居住者の居住の安定に配慮しつつ、「丁寧に進める」と目新しい言い方をしています。
丁寧に何を進めるか、日経新聞は「URの賃貸住宅は約76万戸で、このうち低所得者向けなどに家賃を減額している約9万戸を除く約67万戸が民間移行の対象となる見込だ」とか、「とりあえず首都圏を中心に家賃15万円以上の物件を売りに出し、来年早々にも居住者説明会を開いて理解を得たい考え」と物騒なことを書いています。
これが今日、私たちの住まい、公団住宅をめぐる機構、政府、民主党内閣の動きです。混迷と場当り的な暴論ばかりで、「国民の生活が第一」の政治はどこにも見えません。機構も本社から現地事務所まで、それに振り回されて右往左往の状態が見受けられ、団地管理の質の低下が心配です。
 なぜこんなに馬鹿ばかしいほど混迷し、お先真っ暗な暴論が横行しているのか。その大きな原因は、政権をとって15か月、内閣はこの間、国民の住生活の安定・向上ををどうするのか、それを軸にした住宅政策を立てていないことにあります。機構をあれこれいじってみても、それで事態が解決するはずもなく、公団住宅の民営化に居住安定の展望などありえません。事業仕分けで、高齢者・低所得者等の住まいは自治体または国が責任をもつと判定したのですから、機構改革の問題とは別に、国としての責任ある住宅政策を確立すべきです。糸のない凧、心棒のない駒が思い浮かびます。

Ⅳ 結びに
 内閣、政府、機構にはいま苛立つ思いをもっていますが、希望は大いにあります。本日の集会には全党の代表から励ましとご支援の言葉をたまわり、日頃もお力添えをいただいています。少し足りない点があるとすれば、私たち自身の努力です。ご多忙の国会議員さんではありますが、じっくり私たちの実情や考え、地域での活動や悩みをお話し、いっそうのご理解をたまわれば、大きな力になっていただけます。地元で国会でもっともっとご協力を求めれば、必ず私たちの願いが実現する方向に政治は向かうと確信しています。国会や地方議会の賛同はもちろん、当事者たる国民の合意と協力なしに政策実現は不可能です。公団住宅の民営化が政府の側からいろいろな形で出され、もう20年以上たちます。道理も人間的な情もない企みは、それに抵抗する運動があるかぎり、実現するはずはありません。
 報告の時間がなくなりました。ほかに定期借家契約の問題、団地管理競争化の問題など重要問題があります。昨年4月に機構が発表した定期借家導入の計画は、まだそのまま足踏みしています。管理業務競争化では自治会の役割、協議のいっそうの強化が求められています。先に述べた家賃値上げ阻止、公団住宅を公共住宅として守り抜く課題とともに、力を尽くし、とりあえず良い新年を迎えられるよう祈念して報告を終わります。
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