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今後の住宅政策についての団地自治会代表者集会

基調報告      代表幹事 多和田栄治



 都市公団が独立行政法人の都市再生機構に変わって半年が過ぎた。
 この間に機構の危険な方向がいよいよ明らかになってきている。公団を廃止したあと、公共住宅政策3本柱の、残る住宅金融公庫の解体、公営住宅制度の変質が、今国会の重要課題となってきている。
 本集会では、この情勢と問題点を確認するとともに、「住宅政策の集中改革」をめぐる動きを見定めつつ、全国自治協の要請を今国会の審議に反映させ、機構法付帯決議の全面実現をめざす。                           

1)税制改正(老年者控除の廃止)は、低所得高齢者を直撃する。
 収入が同額でも「所得」が50万円(約41,600円/月)増加するため、
 @高齢者向け優良賃貸住宅の家賃は、収入分位が上がって値上げとなる。
 A家賃改定にともなう特別措置、B建て替え特別措置では、新たに所得基準を超えて措置が受けられなくなる。
 公団住宅でも、高優賃住宅の家賃算定、特別措置の所得要件は、公営住宅法施行令で決められ、本年1月からの税制改正にともない施行令も一部改正された。
 すでに適用されている世帯には3年間の経過措置があるとはいえ、新規適用に期待をかけている世帯をふくめ、大きな影響をあたえる。
 高優賃住宅の家賃についていえば、公営住宅家賃算定の経過年数係数の変更(住宅が古くても家賃を新築並みに近づける)によって、都市機構でも昨年11月募集分から1万円前後(最高17,000円台)の値上げを行なった。加えて今回の老年者控除廃止によって新規入居者には直ちに、従前居住者には来年に6,500 円、3年後には12,100円増額の例もある(東京多摩地区)。
 まず老年者控除の廃止、やがて公的年金等控除の縮小、住民税非課税措置の廃止、さらには消費税増税などの税制改正や、公共住宅制度の根幹をなす公営住宅法の改正が、低所得高齢者にもこのように負担増を押しつけている。
                                     
2)都市機構の「経営改善に向けた取組み」は高家賃政策をすすめ、住宅修繕と団 地管理の水準低下をまねく。
 都市機構は中期計画で、期間中の一般管理費15%以上および事業費25%以上の大幅削減を決めた。経営改善には第1に家賃収入等の確保、第2に管理コストの削減等、とりわけ賃貸住宅にかぎっては具体的に「管理コストの削減」「現地管理業務の委託拡大」を打ちだしている。
 賃貸住宅は旧公団で唯一の黒字部門であり、その営業利益も借入金の利払いと市街地再開発および土地部門がつくる赤字で消えている。前理事は賃貸住宅をすでに「非常に堅実な部門」「収益改善努力をかなり効率的にやっている」と公言した。この事実をよそに、そのうえ、賃貸住宅居住者にむかって「経営の効率化」と「累積欠損金の早期解消」を真っ先にあげる(ニュ−キー紙1月1日号)。
 [イ]高家賃の事実は、募集家賃に継続家賃がますます接近(設備の古さを考慮すると継続家賃は割高)、その募集家賃で空き家が増大していることからも明白。機構は空き家率 0.49%というが(2001年度、国交省資料)、実際にははるかに高い(2001年平均5.7%、04年6.3%、多摩自治協毎年9月調査)。
 継続家賃のいっせい改定を来年にひかえ、本年1月決定の募集家賃額、その「調査報告書」は確かな目安となる。改定ル−ルとともに各自治会で検討を。
 [ロ]賃貸住宅管理費の実態=1992年度から2001年度まで10年間の推移をみても(国交省資料)、家賃収入の3割増にたいし管理費用は2割増にとどまり、管理費用の対家賃収入比は50%台から50%を切るまでに縮減されてきている。しかも、その使途内訳は、リニュ−アル等の、いわゆるストック改善事業に向けられ、既存住宅への経常的な支出が削られる傾向にあると思われる。実際に、家賃値上げのつど全団地居住者に約束してきた新規項目をふくめ計画修繕のおくれが目立つ。
 その上さらに「事業の重点化・集中化」「費用対効果」「コスト削減」は何を意味するか。
 [ハ]こうした大方針のもとでの「現地管理の委託拡大」は、管理の質と水準の低下をまねく。自治会・機構との連携を重視しながらも、機構本社との交渉はもとより現地での日常的な活動が求められている。
 [ニ]家賃、管理の上でキャッシュフロ−の改善を、バランスシ−トの改善策として「保有資産の売却促進」をあげる。この点からも建て替え事業に転換がみられる。東京多摩のひばりが丘団地では、自治会と長年にわたる話し合いで合意・作成してきた建て替えグランドプランを突如とり消し、計画を大幅に縮小(売却用「余剰」地を拡大)し、急ぎ一方的に着手説明会を開こうとしている。

3)今国会で政府は「住宅政策の集中改革」をめざす。
 @公営住宅法、A住宅金融公庫法、B都市再生機構法、C地方住宅公社法のいずれも一部改正案が提出される。その共通の土台として、すでに国土交通省審議会の「新たな住宅政策に対応した制度的枠組みのあり方に関する中間とりまとめ」と国交省住宅局の「住宅政策改革要綱」が発表されている。「集中改革の道筋」は、3本柱の改革と主要課題の取り組み(中古住宅流通・住宅リフォ−ム市場の形成等)からなる。
 これについて全国自治協は「『中間とりまとめ』を読む」で一定の見解をしめした(機関紙第526/527号)。それぞれの「改革」の主な問題点はつぎのとおり。
 @ 公営住宅管理主体の拡大・民間化(指定管理者制度の活用)、住宅行政の主体を市町村に移す、家賃収入補助は廃止(三位一体関連)。
 A 公庫廃止・独法化(07年4月)により住宅ロ−ンの直接融資から民間金融機関支援へ(証券化支援と融資保険業務)。
 B 資産売却で政府貸付金の繰り上げ償還、民間誘導と既存賃貸住宅の有効活用(機構は定期借家制度の導入をかかげる)。
 C 公営住宅の管理権限代行に係わる設立団体の認可および解散規定の整備。
 3本柱改革と合わせた主要課題には、中古住宅流通、耐震改修の促進、性能表示制度の普及、不動産取引・マンション管理情報の提供、等々をあげる。                                                                                  以 上

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