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公団住宅攻撃をゆるせない!規制改革会議に抗議

 「規制改革推進のための第3次答申(2008年12月22日発表)」では、公団住宅居住者の居住不安をさらに深める新たな提起がされています。2月19日、全国自治協役員6人は内閣府の規制改革推進室へ山本正彦政策企画調査官らを訪ね、草刈隆郎規制改革会議議長宛の「『規制改革推進のための第3次答申』に抗議します」という抗議文(別掲)を提出、「77万戸の管理は居住者側も相当の努力をし蓄積をしてきており、世界に誇るべきものだ。規制改革会議はそれを壊していこうとしている。答申を見直してほしい」と要請しました。
 これに対し山本調査官は「指摘の点は委員にもきちんと伝えるし、真摯に受け止めたい。ご批判されるのは委員がどこまで国民の声に耳を傾け『問題意識』を書いたかということかと思う。しかし委員も省庁折衝で合意できないものは『具体的施策』に盛り込んでいない」と述べ、計画どおり進んでいくとの見解を表明しました。全国自治協のメンバーは「とにかく、国民を困らすこと、今まで作り上げてきた地域コミュニティ等を壊すようなこと、国民の居住権を制限するようなことはやめてほしい」と訴えました(以下当日の模様)

 自治協 大変な経済危機の中で、それを逆手にとり「規制改革の推進は必要」との立場で第3次答申をしている。規制改革会議は「官業分野の改革」として都市機構賃貸住宅に異常な敵がい心をあらわにして標的にしており、きわめて遺憾である。
 団地管理の民間委託・競争入札化をいっそう推進しようとしているが、住宅供給が中心のこれまでの住宅政策の中で、公団・都市機構、そして自治会が長年にわたってより良い管理のために取り組み、良好な団地環境をつくり上げ、維持してきた。そのことを無視し、一方的にコスト低減を旗印にして押しつけてきていることは容認できない。
 居住者の高齢化・低所得化が進み住宅セーフティネットの機能をどのように持たしていくか等には触れずに、合理化策が一方的に押しつけられることには納得できない。都市再生事業では「民間で行使しえない土地収用権などを発動し、民間では負担しきれない事業リスクを負担し、事業が進みリスクが少なくなった段階で民間に売却せよ」と財界の要望に応える答申内容だ。賃貸住宅については今までつくり上げてきたコミュニティ、居住の安定を壊して民間のようにやっていくことをめざしている。いま「かんぽの宿」が問題になっているが、川上で方針を決めて川下で儲けを得ることが露骨に浮かび上がっている。
 答申は「具体的施策」で定期借家の拡大を求めているが、2〜3年しか住まない居住者はコミュニティ活動に参加しないため、地域の連帯感が生まれにくく、荒廃することとなる。住宅に住むと同時に地域に住む、周りも考えなくてはいけない。定期借家の拡大はコミュニティを破壊し新たな混乱をもたらすもので、全国的にも5%程度しかないと聞く。そのことが良好な賃貸住宅供給促進の障害になっている。特定の学者の意見を答申に盛り込み実施を迫るというやり方はアンフェアーあり、納得できるものではない。
 規制改革そのものも功罪が問われ、整理の時期に入っている。経済危機を打開するために新しい仕組みをつくる必要性を強調される世論が高まっている。財界本位の「規制改革」ではますます混乱が拡大する。
 米国のオバマ政権は昨日、サブプライムローンで家を失った人たちの救済に7兆円を投入すると発表、今まで推進してきた住宅政策の失敗に多額の税金支出をしなければならなくなっている。日本では今後の若い子育て世代の人たちみんながローンでマンションや戸建てを買えるのか、展望を持てない経済状況のなか今までのような持ち家政策に対応できるのか。全国自治協は、住宅セーフティネットだけでなく子育てファミリー世代のためにも公的賃貸住宅が絶対必要だと主張している。
 半世紀にわたり積み上げてきたUR賃貸住宅は国民の重要な財産。わが国の住宅政策は供給政策で管理の政策はなく、すべて供給側の政策だった。そのなかで77万戸の管理は、居住者側も相当の努力をし蓄積をしてきており、世界に誇るべきものだ。規制改革会議はそれを壊していこうとしている。答申を改めるべきだ。また、定期借家は何のメリットもないということを主張したい。
 国民の目線ではなく企業の目線に立った答申内容で怒りを覚える。管理では慣れたところが担当することが望ましいのに、競争入札になり団地がバラバラに管理され、問題発生の都度、住宅管理センターが対応している。自治会は業者が代わることで新たに対応しなくてはならない。センターも民営化することが言われいるが、団地の管理はどうなるのかと危惧する。こういう実情を理解していない方が規制改革会議で勝手なことを言っている。自民党参議院議員会長の指摘どおり解散すべきだ。
 若い世代等で年収200万円以下が1,000万人を超えた。年金生活者もそうだが家賃が8万〜10万円ではとても入居できない。家賃が5万円内外である公団住宅は救いになっている。それを売り払えとか、定期借家にせよと言うことになるとその人たちをどうするのか。
 地域では孤独死、治安の問題などでネットワークをつくることを警察からも消防署からも求められるが、それらも形成できなくなる。
 「年越し派遣村」の人たちにとっても住むところを確保して安心してもらえる政策が基本だ。
 規制改革推進室 答申の「問題意識」部分は規制改革会議としての見解であり、「具体的施策」は国土交通省とも議論し国の施策としてやるべきであろうと合意のできた部分で、「規制改革推進3か年計画の改定」に入ってくる部分である。
 自治協 規制改革会議は非常に強硬だと聞いている。私たちの意見・要望についてまったく聞く耳を持たず、強権的に答申を出したのではないかと思う。一部の国民・企業の目線であって大多数庶民・国民の声を聞いていない。
 厚生労働省は第3次答申が出た4日後の昨年12月26日、「厚生労働省の考え方」を発表し反論した。
 推進室 指摘の点は委員にもきちんと伝えるし、真摯に受け止めたい。ご批判されるのは委員がどこまで国民の声に耳を傾け「問題意識」を書いたかということかと思う。しかし委員も省庁折衝で合意できないものは「具体的施策」に盛り込んでいない。厚労省も「具体的施策」には合意しており、「問題意識」に対して省の考え方は違うとの見解を公表したものだ。
 自治協 定期借家推進の中心は福井秀夫委員であることを指摘しなければならない。法務省の法制審議会では反対意見が多く、法務委員会で通すことができず、1999年の衆参両院建設委員会で議員立法により「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案」を可決し、借地借家法を「改正」、定期借家制度を導入した際、定期借家推進協議会の活動家として役割をはたしたのが福井委員だった。10年経過した現在、定期借家の新規契約はわずか5%(店舗も多く含む)。そのようなものをなぜUR賃貸住宅のすべての新規入居契約に適用させようとするのか。数字が上がらないのでURに強制的にやらせようとねらっているとしか思えない。建て替えではすでに空き家の活用目的に定期借家契約が導入されており、一般契約にまで導入する必要はない。やめるべきだ。
 推進室 難しいところだが、政府の一員として計画どおり進んでいく。
 自治協 仮に政権が変わった場合は、それまでの閣議決定はどうなるのか。
 推進室 仮定の話はしづらいが、スケジュールに乗っ取った形での3か年計画として判断を仰ぐことにつきる。
 自治協 規制改革会議がスタートしたころとは状況が大きく変わってきている。3か年計画再改定の閣議決定(3月中)までに国交省と相談し、答申どおりの決定をしないよう検討して頂きたい。


      ◆ 抗 議 文 ◆

規制改革会議 議長 草刈 隆郎 様
                                               2009年2月19日
                                    全国公団住宅自治会協議会

  「規制改革推進のための第3次答申」に抗議します

 規制改革会議(以下、会議と略す)が2008年12月22日に発表した第3次答申および先行する諸答申は、公共の住宅資産を私企業営利のために奪い、国民の住まいをいっそう危うくするものであり、答申の内容に抗議します。
 私たちは、政府にたいしても「規制改革推進のための3か年計画」再改定の中止、現行「3か年計画」の抜本見直しを要請するものです。

廃止すべき規制改革会議

 この10年余、次々名称を変えて現在にいたる会議が推進してきた「規制改革」とは何だったのか、いま改めて問われています。
 麻生首相の施政方針演説にたいする1月30日の参議院代表質問で自民党・尾辻議員会長は「会議のあり方に強い疑念をもっている。経営者の視点で規制改革が進められ、その結果、派遣の大量打ち切りとなり、多くの人を失業に追い込んだ」と指摘し、規制改革会議と経済財政諮問会議の廃止を迫りました。また民主党・輿石議員会長は「日本社会の崩壊の危機をもたらしたのは、小泉構造改革以来の市場原理主義、弱肉強食政治の結果だ」と述べ、構造改革とその核をなす規制改革にたいして与野党相通じる見解が示されました。
 さらに鳩山総務相は尾辻質問に答え「かんぽの宿」一括売却問題に関連し、前身会議議長の宮内オリックス会長を批判しました。宮内氏は小泉退陣までの10年間トップの座を占め、川上で規制改革・民営化の旗ふり役をつとめ、川下での改革利権漁りは周知のこと、その一端が「かんぽの宿」問題となって現れました。
 いまや会議の役割を問うどころか会議の廃止を求める世論が広まっています。

日本社会に危機をもたらした規制改革

 第3次答申は冒頭、アメリカ発の金融危機が日本経済にあたえた深刻な影響を理由にあげ、国際競争に耐え、企業活動を活性化するには「規制改革推進は今まで以上に重要」と結論づけます。答申は、そもそも規制改革がアメリカ政府の対日「年次改革要望書」と、経営のアメリカ型化をめざすわが国財界の言いなりになって進められてきたことを棚に上げ、大津波の被害を甚大にしたのは、防波堤役の既存の国内各セーフティネットが壊されてきた、その張本人が規制改革であることについても、いささかの反省もありません。それどころか規制改革がもたらした危機を逆手にとって、国民生活の基本的分野のさらなる「改革」に活路を見いだそうとしています。本答申に先立つ「中間とりまとめ」で改革の矛先について、医療、保育、農業、雇用、教育等「強固で硬直的な規制の下にある分野、官業の分野(ねらいは公団住宅)には、改革されるべき課題がなお依然として厚い岩盤のように存在している」と記しています。それなしに国民生活の基本が守れない必須の「規制」を企業営利目的になくした後どうなるか、規制改革10年余の現状をみれば明白です。

公団住宅の削減・売却をせまる答申に反論

 「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」(2006年12月25日)の内容がのちに閣議決定されて公団住宅(都市機構の賃貸住宅)の削減・売却方針となり、機構の「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」(2007年12月)が策定されました。
 具体的に答申の内実をみてみます。答申はこれまで大要つぎの6項目を求めてきました。
1)賃貸住宅77万戸の規模は過大である、削減目標を明確にせよ。
2)公営住宅階層の居住者が大半を占める物件は、地方公共団体に譲渡するなどして機構から切り離せ。
3)建て替え団地は採算見通しを基準に選定し、居住者の移転を促進し、家賃減額を縮小せよ。
4)建て替え、建物の集約化により生じる余剰地の売却により資産圧縮に努めよ。
5)新規入居者との契約に定期借家契約を幅広く導入せよ。
6)管理業務の民間委託を拡大し、業務の効率かとコストの削減を図れ。
 1) 77万戸がなぜ過大なのか。全住宅数に占る公的賃貸住宅の割合は、10%台から20%超のヨーロッパ主要国にたいし、わが国は大都市地域に限っても7.2%、4大都市圏でのファミリー向け賃貸住宅の不足は250万戸といわれ、公営住宅は高倍率の応募がありながら新規建設ストップの状況です。公団住宅の「過大」は、戸数を削減し敷地売却を促進させるための作り話でしかありません。「過大」の根拠は示さずに、削減・売却の方策は具体的かつ詳細に述べていることから答申の本旨は明確です。
 2) 公営住宅階層の居住者が大半を占める団地が多いことを認めながら、対応策は、機構からの切り離しを第一義に、無責任にも現実性のないことを承知で「地方公共団体への譲渡」をあげ、「など」を加えることで民間開放に道を開いています。
 3)4) の両項目には、答申が強調する「国民の目線に立って、暮らしの安心・豊かさ・利便性の向上に努める」姿勢は皆無、逆に人間が生活する住宅、コミュニティを「ストック」「物件」としか見ない悪質企業家の思惑ばかりが目立ちます。
 5) 答申は定期借家契約の家主側にとっての一方的な有利さだけを説いています。それが幅広い導入の必要性の理由とみなせます。
 6) 住宅および住環境の維持保全など団地管理について「初めに民間委託、競争入札ありき」の強行は、経費のムダ、非効率を拡大させます。管理コストの原資は居住者が支払う家賃と共益費であり、業務の効率化に向けては当然に、機構と居住者との相互理解、協力が前提となるべきです。
 都市機構の賃貸住宅事業にかんする答申の指摘を、都市再生事業へのそれと対照させると、答申のいう「規制改革」の本質がいっそう鮮明になります。「機構は民間では行使しえない土地収用権などを発動し、民間では負担しきれない事業リスクを負担し、事業が進みリスクが少なくなった段階で民間に売却せよ」と経済界の強欲丸出しです。この答申ならば当然に、人間の居住安定とコミュニティを守り育てることの大切さへの配慮はみられず、多くの国民を居住不安に追いやりコミュニティを壊しても「民間の事業機会創出のバックアップに努めるべき」ばかりが露出しています。
 答申丸呑みの閣議決定に従った機構の「団地再編方針」は基本的に、これら答申事項の強行実施を図るもので、私たちは阻止の立場をとっています。機構はすでにこの方針実施にむけ、団地丸ごと解体あるいは一部民間売却に着手し、居住者に移転を求め、団地居住者と周辺地域の長きにわたる受難が始まっています。

部分民営化と定期借家契約拡大に標的しぼる第3次答申
 第3次答申が機構賃貸住宅事業にかんして新たに打ち出したのは、部分民営化と定期借家契約拡大です。
 会議の答申をうけての「規制改革推進のための3か年計画」とその後の閣議決定に従って機構は「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を策定し、全国の団地について整備計画の類型案を通告、実施にむけ順次着手しています。そこへ新たに「部分民営化」の押し付けです。
 会議は、既定の事項が「適切かつ着実に実行されるよう監視する」立場から飛び出して、新たに「部分民営化」を提起してきた背景には、差し迫った「民間の事業機会創出」への焦りが読みとれます。公団住宅についてはこれまで証券化を柱に全面的な民営化が検討されてきたようですが、アメリカでのサブプライム住宅ローンに始まる国際的な証券化市場の破綻によりこの道は閉ざされたうえに、「全部民営化」のリスクはあまりにも大きいことは明らかであり、手っ取り早く儲かる団地から民営化を急ぐ「効率的、現実的な」手法を選んだといえます。
 団地再生・再編にさいし機構にとって難問の一つは、正当事由制度に守られた居住者との普通借家契約です。現状で居住者に移転を求めるには、正当事由の代替としてのコストを要します。まして部分的にせよ民営化を実行するには、今から定期借家契約への切り替え、拡大が前提条件として要求されます。部分民営化とあわせて定期借家契約拡大提起の理由はここにあります。
 会議の八田達夫議長代理、福井秀夫委員たちがかつて「良質な賃貸住宅の供給促進」の名目で推進し制定をみた定期借家制度は、隠された目的どおり、借家関係終了、借家人追い出しの手段となっています。
 第3次答申において、定期借家契約の幅広い導入は単なる「問題意識」にとどまらず、平成21年度に措置すべき「具体的施策」と位置づけています。「既存賃貸住宅への新規入居者との賃貸借契約は、建て替え予定の団地以外においても、定期借家契約を幅広く導入すべきである。少なくとも平成20年度から21年度において、管理開始年代、立地、家賃帯等の面で代表例と見られる団地を試行的に選定して団地再生事業等を予定しているストックを含む機構の全賃貸住宅ストックの約2割の住宅を対象に、新規入居者募集については、すべて定期借家契約を締結すべきである」と。
定期借家契約の締結は、賃貸借当事者間の選択に託され、借家市場の自由に委ねられています。公的賃貸住宅といえども権力を背景に定期借家契約を押し付けることは、現状では法的に許されないはずです。借家権の継続性が否定されている下での市民生活、営業は考えられません。定期借家契約の強権的な拡大は、人間居住、営業の否定であり、コミュニティを崩壊にみちびくものです。
 以上の観点から、第3次答申とその実行を推進する規制改革会議に抗議し、同会議の速やかな廃止を要求します。

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