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写真提供/富樫議員


全国自治協代表 片岡規子住宅環境部長の参考人発言内容

これからも公共住宅としての役割の確認を


 全国公団自治協の片岡規子です。
 都市再生機構法案の審議にさいし、公団住宅居住者の団体である全国自治協に、発言の機会をお与え下さいまして、深く感謝申し上げます。
 私たちは、安心して住みつづけられる公団住宅を願って多彩な運動をしています。住まいや環境のこと、交通の利便性改善、ゴミ問題や防災対策など、日常的な問題に取り組んできました。
 団地を「ふるさと」として育つ子どもたちのために、各団地で夏まつりを開催していますが、団地の近隣では、「ひろば」が無くなりやぐらを組む場所がなく、夏まつりが年々出来なくなっています。公団住宅の夏まつりには、近隣のおとなも子どもも参加して、地域ぐるみのお祭りとなっています。
 高齢者への対応は、敬老の諸行事と共に、自治会では居住者の交流の場として団地内で「ふれあい喫茶」活動がさかんに行われ、コミュニティを深め、同時に安否の気遣い活動としても一役を担った活動になっています。
 これらの運動をより発展させるために、地方毎に自治協をつくり、全国自治協に結束して団地居住者の要望を基本に活動を進めています。
 今、私たちが大変心配していることは、独立行政法人都市再生機構に変わるということです。3年半前に住宅都市整備公団が、都市基盤整備公団に変わる際、国会で法案をご審議いただき、公団住宅の必要性が確認されほっとしました。その時の法案に対する衆・参両院の付帯決議で「都市基盤整備公団は既存の賃貸住宅団地について、居住者との信頼関係を尊重し、十分な意志の疎通の下に住宅や利便施設等の適切な維持管理を行い、快適な生活環境の改善に努めること。また、老朽化した賃貸住宅の建て替えや住戸改善に当たっては、居住者の居住の安定に努めること」に対応して、公団と自治協は「安全・安心・快適」を柱にして、連携した話し合いを進めています。 
 こうした矢先に、またも特殊法人改革の中で「都市公団廃止、既存住宅は棟ごとの売却に努める、管理の民間委託」が閣議決定され、これから私たちの住まいは、どうなっていくのか、たいへん不安に思っています。独立行政法人になれば、中期目標に照らして定期的に存廃・民営化が検討されることになると聞いています。高齢者の多い公団住宅の居住者は、安定し継続して住み続けたいと思っている住まいが、3年から5年毎に見直しをされる事は、耐え難い不安にさらされます。
 しかし、昨日の審議や過日の衆議院国土交通委員会で、都市再生機構法第3条の目的にある「賃貸住宅の安定的な確保」は、現居住者の「居住の安定確保」も意味しているとのことで、少し安心したところです。
 これまで私たちが願っていることを申し上げ、新機構法案の審議に関係して、ぜひ改善に向けてのご尽力をお願いしたいと思っています。
1.団地居住者の生活実態について申し上げますと、平成14年秋に実施した全国自治協の定期調査で、明らかになったことは、世帯主の高齢化が進み、収入の低下も進んでいることです。自治協の団地の生活と住まいアンケートでは…資料説明
(1)世帯主の年齢は60歳以上が半数を占め、3年前の調査に比べて1割も増え、70歳以上の世帯主が2割に至り、資料2ページの世帯主年齢の推移をみますと、急速に高齢化が進んでいます。 多くの自治体では、団地地区が最も高齢化率の高い所だといわれています。
(2)今後の住まいについての希望は、7割の世帯が公団住宅に長く住み続けたいと願い、家賃値上げや棟ごとの売却などの将来が不安であるとしています。「公営住宅に住み替えたい」世帯が1割近くあり、あわせて8割が安心して住める「公共住宅」を求めています。
(3)世帯の年間収入は所得5分位で見ますと、最も低い年収469万円未満の第1分位層が半数に達し、そのうち260万円未満の世帯が3割にもなっています。
  以上述べましたように、団地居住者の収入実態からみて、多くの世帯は公営住宅入居資格層に重なり、公団住宅が公営住宅の補完的な役割を果たしています。
 都市公団は本年4月から継続家賃を値上げしました。東京支社管内では、築35年以上の老朽化した住宅でも「近傍同種」を理由に6,000円から10,000円近い値上げになったところもあります。
  例えば昭和40年入居の三鷹駅前団地では、1DK27.9uの最高値上げは6,000円で値上げ後の家賃は60,900円、トイレ、洗面所、浴室が一緒で大変狭い住宅です。3DKは61uで最高9,200円の値上げで家賃は91,500円となりました。ベランダもなく、エアコンの置き場もない、物干場は屋上で、1階は遊戯施設という環境でありながら、「近傍同種」を理由にこの不況下に大幅な値上げです。継続家賃は新規とほぼ変わらない高さまで値上げされ、低所得の多い継続居住者は、家賃が多大な負担となり、3年ごとに大幅な値上げになると住み続けられなくなります。
  公団が行っている近傍同種家賃の鑑定方法や鑑定結果から各戸の家賃を算出する方式は、不透明であり住宅の質や古さ、設備の有無が、反映されているのか不明なのが実体です。この際、算定方法や改定ルールは抜本的に見直す必要があります。
  法案25条4項で「……居住者が高齢者、身体障害者その他の特に居住の安定を図る必要があるもので、これらの規定による家賃を支払うことが困難であると認められるものである場合……家賃を減免することができる」となっています(都市公団法も同文)。
 居住者の生活実態を斟酌し「居住の安定を図るため」の実効ある減免の措置をご審議いただきたいと願っています。
2.公団賃貸住宅は住まいとまちづくりのパイオニアとして重要な役割を果たしています。公団は半世紀にわたり、まちづくりと一体に集合住宅の建設と適切な管理をすすめ、子ども達にも高齢者にもふさわしい住環境を整備しています。団地に隣接して建設されているマンションは、多くの場合、広場や子どもの遊び場がなく、団地の公園で近隣マンションの子ども達が大勢遊んでいます。
  公団賃貸住宅は、家賃はやや高いものの、権利金・更新料が不要で、高齢者等の入居差別がないこと、住宅の修繕等も適切に行われているなど、公団住宅の存在意義は大変大きいものがあります。建設と併せて管理が重要です。公団は建設だけでなく、団地管理も重視して一貫した住宅・環境に対応してきました。
 住宅の修繕についても、国会からの要請や居住者の運動で、過去に行われた家賃値上げの増収額は住環境整備に当てられ、修繕が計画的に行われてきました。阪神淡路大震災では、公団住宅の倒壊や犠牲者は一人もなく、公団住宅の確かさと安心が実証されました。公団の建築・技術は、たえず研究を重ねられ、既存住宅の質の向上や改善がおこなわれてきました。
  独立行政法人・都市再生機構になると「効率」や「利益」が先行し、住宅の修繕や改善がおろそかになる恐れがあります。また、賃貸住宅部門は健全な経営で「黒字」といわれていますが、他の赤字部門の補填に使われ、修繕や環境改善への予算が削減されるのではないか心配です。区分経理を徹底し、これまでの修繕等の質を落とさないようにしてほしいと思っています。
3.建て替え事業について是非不公平な制度を改善していただきたいと願っています。初期に建替え着手された団地は、戻り入居の制度が完備していないため、高家賃のために戻り率が大変低く、余儀なく転居していきました。平成10年に新制度ができ、戻り入居しやすくなり建て替えのトラブルもほとんどなくなりました。この新制度はそれ以前に着手された団地に遡及されず、高家賃のまま放置されていますので、家賃支払いが出来ず転居が相次いでいます。都市再生機構への移行あたり、従来の制度の不備な点を改善してほしいと思います。
  また、建て替えにあたって、戻り入居住宅だけ建設するといわれていますが、現在の居住実態からみて高齢者だけの団地になってしまいます。これまでのように子育て世帯から高齢者まで住み、コミュニティがはぐくまれる団地を望んでいます。
4.住宅管理の民間委託の拡大、さらには工事の民間拡大が言われていますが、公団住宅を社会資産として良好に維持する上で、質低下を心配しています。都市公団の業務、または工事だからといって、入居者の家賃と共益費でまかなう住宅の管理や団地の清掃などをすべて「公共事業」「公共工事」と規定し、競争入札促進に関する考え方を強いることは、適切で合理的とは思えません。
  団地は生活の場であり、特に居住中の住宅内に入る仕事は、それをわきまえた対応が必要です。これまで長年の経験ある業者は、工事のマニュアルをつくり、繰り返し指導を行いトラブルを未然にふせいでいます。しかし、競争入札で新規に参入した業者は、居住者がいる工事に慣れないばかりか、リニューアル工事や環境整備工事半ばで仕事を放棄し、工事が大幅に遅れ居住者は不安を感じています。
 今まで担当し、団地の施設や設備、備品に熟知した身近な業者として、24時間緊急時にも対応できる日本総合住生活(JS)やその他居住者に馴染み深い、安定的に工事可能な業者が望まれています。
 例えば植栽手入れについては、多くの自治会で公団の担当と業者と共に団地内を点検し剪定樹木を決め、予算の範囲内で執行しています。樹木の剪定は毎年のものから5〜6年周期のものや、その年の雨量・気温等によって変わり、長い間携わってきた業者でないと、話し合いはうまくいきません。
 また、台風等の倒木等の被害の場合も、身近な業者がすぐに対応できる態勢が必要で、競争入札で現場から離れた、まして他県の業者では手早い対応は困難だと思います。競争入札至上主義になると、これまでの計算できない仕事の中身が失われ、ひいては質の低下につながります。居住者の協力と信頼関係がつくられ、このことを配慮した上での効率的な改革を望んでいます。
 最後に、住宅団地を物理的に管理するだけでなく、居住者相互の助け合いや防災、環境改善など、住みよいコミュニティの形成も管理のめざす課題ですが、それには、管理者と居住者、地元自治体とのパ−トナ−シップがいっそう大切になってきます。
 都市公団を廃止し独立行政法人都市再生機構に移行することは、住宅政策の上でたいへん大きな転機であると思います。今回は、これからの住宅政策をどうするのかということがはっきり示されないまま、まず初めに行政改革ありきで、組織の改編が進められているのではないかと心配です。これまで半世紀にわたり集合住宅・まちづくりを進めてきた公団の果たした役割は大きく、今後も公的住宅に期待している国民に「すべて民間で」ということでなく、公共住宅政策をきちんと進めていただきたいと願うものです。
 集合住宅管理の面でたくさんのノウハウを蓄積してきました。それは国民の住生活にとって貴重な財産でもあります。この大切な蓄積が「公団改革」の名によって崩壊したり、失われてしまうことがないようにしていただきたいと願っています。
 新法人移行にさいし、ぜひご審議いただきたい事を中心に意見を述べました。ありがとうございました。

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