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●団地自治会代表者国会要請集会を開催●

◆報告@  公団住宅の家賃値上げ問題、住生活基本法について

代表幹事   多和田栄治

T今回の値上げ見合わせ・中止を要求する

1)居住者の生活実態をかえりみず、今すでに重い家賃のさらなる値上げ
 都市機構は継続家賃改定が、16万6,000戸にたいし平均 1,200円の引き上げ、2万7,000戸には 3,800円の引き下げ、全国 76万7,000戸では 100円の引き上げと数字を並べ、問題がないかのように国会議員にも説明して回わっている。
 しかし現実には、東京都で1万円、神奈川県の6,000円などの最高額をはじめ、2,000〜4,000円台の値上げになった世帯は数多くあり、とんでもない値上げであることを確認する必要がある。
 もちろん当面する問題は、各戸に通告されたこれらの値上げ幅であるが、根本には現状すでに「重い」と大半が答えている家賃であること、それに追討ちをかけてさらに値上げしようとする機構の姿勢がなによりも問題である。居住者の生活実態はといえば、かりに 100円の値上げでも家計に痛い状況にあることは、昨秋の自治協アンケート調査でも明らかにされている。
 世帯主60歳以上が55%、年金生活世帯が急増し、年収 446万円未満の第1分位層が70%を占めるなど、高齢化と収入低下がすすんでいる。とくに第1分位のなかでも、 260万円を境にそれ以下の層が半数をこえ、調査のたびに増大している。国土交通省も旧公団住宅居住者の大半が公営住宅収入層であることを認めている。

2)市場家賃が下落傾向にあるなかで 上げつづける機構の継続家賃
 今回の家賃値上げの不当性は、多少とも公的役割をになう住宅でありながら、市場主義をかざして居住者の生活実態を顧みない点にあるが、市場の動向への逆行という点でも不当である。市場家賃の下落傾向は続いている。公団・機構は5年前から空き家募集の家賃水準を年々下げてきている。それでも空き家は埋まらないどころか増えている。
 これから入居を決めようとする人は、家賃が高ければ外を探すことができる。しかし継続居住者にとっては、いまの住居が生活の本拠であり、分不相応に値上げされても耐えてそこで懸命に生活するほかない。それが住居でありコミュニティの本質である。機構は住居まで市場での商品扱いをするばかりで、人間の生活を見ない。改定通知に「近傍同種家賃」なるものを改定家賃額と併記し、次回の値上げ目標まで定め、居住者の住みつづけたいとする「弱み」につけこんで、募集家賃は下げても継続家賃を上げつづける。

3)国会決議無視もはなはだしい低所 得高齢者等へも家賃値上げ 
 低所得の高齢者等への特別措置は、家賃が上昇しつづけた時期に自治協の運動と国会の協力があって実現したもので、値上げ幅を抑えるうえでの役割を果たした。「ただし改定前家賃を下限とする」とし、値下げは認めず、値上げを前提とするこの措置を逆手にとり、収入低下、市場下落のいま、機構は「居住の安定を損なうことのないよう」配慮して上限を設けたと称し、低所得高齢者等になんと6千円までの値上げをするという。機構の家賃値上げの過酷さが象徴的に見られる。

4)機構に国会決議尊重を求め、決議し た責任において国会の働きかけを要請
 公団を廃止して都市機構に移行するに際し、公団住宅居住者の生活実態と将来予測を考えると必要だったから機構法付帯決議が採択されたはずである。自治協は付帯決議を国会の総意、決議として尊重し、あくまで実現を要請していく。
 付帯決議では、家賃が居住者に過大な負担にならないよう、低所得の高齢者等には減免などして居住の安定に配慮するよう機構に求めている。機構がそれをしなければ、決議をした国会の責任において実現が図られるように国会に協力を要請したい。 

5)「家賃改定ルール」の抜本的見直し を要求
 以上みた家賃値上げは、都市機構の経営目標そのものに根ざすが、その問題点は直接的には現行の「家賃改定ルール」から起こっている。第1は、日本不動産研究所に丸投げしている「近傍同種家賃」査定の不透明さ、第2には、そのデータを根拠に家賃改定額を算出する機構の秘密主義をなくし、公正で透明な「ルール」に変えさせる運動が必要になってきている。

U「住生活基本法」に対する私たちの基本要求は何か?

 戦後の住宅政策の枠組みを支えてきた住宅建設計画法を廃止して「住生活基本法」にかえ、住宅政策の大転換を仕上げようとしている。
 住宅建設計画法の骨子は、国民だれもが人間らしい最低限度の住居が得られるよう国の責任で、居住水準の設定、居住費負担の適正化、公的住宅供給制度の役割等について目標を定め、その実現をめざして住宅建設5か年計画を立ててきた。住宅宅地審議会の答申も、少なくとも1970年代まではこれを積極的に支えてきた。しかし現実には、これらの目標は果たされず、むしろ公的責任の棚上げ、民営化に向かって後退した。その最大の原因は、住まいの確保を国民の権利、国と地方自治体の責任と認める立場をとってこなかったからである。私たちは居住権を憲法13条の幸福追求権と25条の生存権の一つを位置づけ、「住まいは福祉、住まいは人権」を主張してきた。
 小泉内閣になって公団住宅制度や住宅金融公庫の廃止をはじめ公共住宅制度の縮小、借家法の改悪を進めてきた。「住生活基本法」はこの流れの到達点と見ざるをえないし、さきの住建法の目標と欠落の観点から法案を読んでみよう。
 新法の目的は、住生活の安定確保および向上の促進にかんする施策について、基本理念を定め、国および地方公共団体ならびに住宅関連事業者の責務を明らかにするとともに、基本的施策、基本計画を定める……としている。
 この法案では、機構の賃貸住宅を含め一括して「公営住宅等」とされ、公共とか公的住宅の用語は一切見当たらない。
 基本理念は、4条すべてが「……図られることを旨として、行われなければならない」で結ばれ、実施の主体、責任は記されていない。責務についても「努めなければならない」とするのみで、明確な義務づけを避けている。国民の居住権を確認してこそ実施主体への義務づけが伴うのにたいし、「努力」義務を並べるだけの基本法は、居住を国民の基本的人権としてではなく、自助自力と市場まかせにした上での「おカミの施し」としてしか位置づけていない証拠だろう。

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