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都市機構  継続家賃改定ルール見直しを発表
自治協要望に応え 4党が国交相宛要請
 都市機構は閣議決定「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(2013年12月24日)と第4ワーキンググループ報告書(2013年12月18日)に従い、経営基本問題懇談会家賃部会で継続家賃の改定ルール見直しの検討を行い、決定したとして2015年12月24日に記者発表しました。
 全国自治協は、これまで閣議決定に基づいて進められる機構改革が深刻な居住不安をもたらすとして国会議員他関係方面へ広く訴えてきました。この間「第10回団地の生活と住まいアンケート」や2015年全国統一行動・署名活動等に全力を挙げて取り組みました。今回の継続家賃改定ルール見直しでは、低所得高齢者等に対する特別措置の改悪を阻止したこと、経過措置をとらせたこと―等は大変厳しい状況の中での運動の成果です。
 自治会・自治協の結束した要求と運動に応え、2015年12月、自由民主党公団居住者を守る議員連盟、民主党旧公団居住安定化推進議員連盟、公明党国土交通部会、日本共産党国会議員団から国土交通大臣宛の要請(別掲)が行われました。こうした各党のご理解を得たことも今後の運動につながる成果です。
 全国自治協は以下を継続家賃改定ルール見直しについての見解とし、安心して住み続けられる公団住宅を求める運動を継続していきます。
安心して住みつづけられる公団住宅へ
さらに結束し運動の継続を
機構「継続家賃改定ルール」見直し発表について
全国公団住宅自治会協議会

 2013年12月24日の閣議決定「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」は、都市再生機構に対し継続家賃の引上げ幅の拡大、改定周期の短縮等「家賃改定ルール」の2015年度内見直しを求めました。機構はこれに従って検討を行い、2015年12月24日に見直し後の「継続家賃改定ルール」を発表しました。このルールによる家賃改定は、2016年4月1日から順次実施するとしています。

見直しによって変更された主な点は以下のとおりです。
①算定基準とする家賃変動率は、総務省統計局の家賃指数(消費者物価指数)から、機構が査定する近傍同種家賃の変動率に変える。
②改定時期は、3年ごとの一斉改定を、最短2年ごと各住宅の契約更新日に変える。
③改定対象は、近傍同種家賃との乖離が5%を超えた住宅とする。
④激変緩和措置(6,000円以上の値上げに対する抑制措置)は廃止する。
⑤低所得高齢者等への特別措置対象に、母子・父子世帯に18歳未満の者を扶養する世帯を追加し、「子育て世帯」とする。

◆私たちの運動によって機構見直し案が変更された点は以下のとおりです。
①特別措置対象を収入分位10%以下に限るとする等の案は取り下げ、現行どおりとした。
②子育て世帯への特別措置適用を拡充した。
③家賃改定による増収額の修繕費等充当の項目の廃止は取り止め、「賃貸住宅事業に優先的に充当する」と改めた。
④2014年3月31日以前から入居している世帯に対し、次回改定を2017年4月1日以降にする、近傍同種との乖離が解消するまでの間は3年ごとの改定、特別措置、激変緩和措置を継続する等の経過措置をとった。

◆私たちの運動とその成果
 機構は今回のルール見直しの目的に、「近傍同種家賃との乖離」「家賃インフレへの速やかな対応」を理由に家賃収入の最大化をかかげました。検討にあたっては、空き家の増大が示す高家賃の現状や居住者の収入実態をかえりみず、家賃値上げ強化のルールづくりに終始しました。機構法25条4項の「家賃の減免」条項、居住者の家賃負担に十分な配慮を求めた機構法付帯決議、家賃変更は当事者間協議を本旨とするとの借地借家法をも無視しています。閣議決定が示した方針と機構の検討内容は、住宅セーフティネットとしての公共的役割を後退させるものです。

 こうした緊迫した状況のなかで全国自治協は、安心して住みつづけられる公団住宅を求め、機構のルール見直しの問題点を指摘しながら、次のような運動を展開してきました。
①第10回団地の生活と住まいのアンケートを実施し、公団住宅居住者の生活実態と要望を明らかにした。その貴重な集約結果を関係各方面への要請に活用した。
②千葉県、神奈川県をはじめ地方議会への請願・陳情、首長への働きかけを行い、43議会が政府・機構へ意見書を提出、11の首長からも要望書が出された。
③国会要請集会を開催し、国会議員への要請行動を強めた。
④国土交通省との交渉を重ね、居住者が安心して住み続けられる家賃制度の実現を訴えた。
⑤機構経営基本懇家賃部会で全国自治協代表の委員が問題点を指摘し、家賃改定ルールの改悪に反対する意見を述べた。
⑥機構本社との話し合い、大臣の指示によって機構が行った全国的な意見募集、自治会からのヒアリングにおいて改定ルール改悪に反対する意見を表明した。

 全国自治協は、2015年全国統一行動の成功めざして学習・宣伝と署名・カンパ活動に全力をあげるとともに、国会各政党に協力要請を重ねました。その結果2015年12月、自由民主党、民主党の各議員連盟、公明党、日本共産党から国土交通大臣宛に要請が行われ、このことが都市機構、国土交通省に大きな影響を与えました。
 こうした全国自治協の運動が上述のとおり、低所得高齢者世帯等の特別措置の大幅改悪を止めさせるなど、機構の家賃改定ルール見直しに一定の変更等をよぎなくさせました。
 これらは全国の居住者が団結して運動し、きびしい情勢を切り開いて勝ち取った成果です。
今後の課題 今回の家賃改定ルール見直しが、私たちの居住の安定をいっそう危うくすることは明白です。収入に見合った家賃制度の実現と公共住宅としての維持発展をめざし、家賃値上げには断固反対していきます。私たちの生活と近年ますます増大する空き家の実態から、家賃の引き下げこそが必要です。
 今後は家賃値上げを3年ごとから最短2年ごとに早め、各戸の契約更新日に行います。機構の一方的な家賃値上げは公的な監視からのがれ、借地借家法の定める居住者の権利もなきものとします。各戸バラバラにしての家賃値上げ、敷金の追加徴収を行うルールは、コミュニティの荒廃にもつながり、居住者の結束がますます大切になってきます。
 機構の家賃ルール見直しをはじめ国の公共住宅政策が大きく後退しているなかで、私たちの要求実現はたいへんきびしい状況となっています。しかし、私たちの運動によって、各党から国土交通大臣宛に要請が行われるなど地方議会等も含め理解と協力は着実に広がってきています。これまで築き上げてきた土台のうえにさらに居住者の要求と運動を強め、安心して住みつづけられる公団住宅の実現をめざして運動を継続していきましょう。

4党から出された国土交通大臣宛の要望書
◆自由民主党・公団住宅居住者を守る議員連盟

        多様な世代が暮らしやすいUR賃貸住宅の実現に関する要望

 我が国において、大都市部を中心に急速な少子高齢化が進んでいる中で、安倍内閣では、GDP600兆円の達成、希望出生率1.8、介護離職者ゼロという新たな目標を掲げて取り組んでいる。
 この目標達成のためには、高齢者世帯、若年世帯、子育て世帯の住まいの確保、良好な居住環境の提供など、多様な世代が安心して暮らせる環境を作っていくことが必要不可欠であり、UR賃貸住宅の果たすべき役割はますます重要となっている。今後のインフレリスク等に的確に対応し、URがその役割を持続的に果たしていくため、空き家の解消や財務戦略等による経営改善に努めるべきである。
 以上を踏まえ、必要な予算の確保を含め、次に取り組むよう要望する。
一 高齢者世帯や子育て世帯が快適に安心して住めるよう、バリアフリー化などUR団地の居住環境の改善等を推進すること
一 UR団地のコミュニティの維持・活性化に向けて、次に積極的に取り組むこと
・空き家の多いUR団地については、空き家解消に一層取り組むとともに、若年世帯、子育て世帯向けの入居促進を図るなど、空き家をコミュニティの維持・活性化に活用すること
・UR団地居住者の高齢化が進んでいる状況を踏まえ、民間企業等とのパートナーシップによる若者向けの住戸の供給、大学との連携による学生や留学生の居住支援などによる若年世代の入居の促進を図ること
一 子育て世帯や高齢者世帯を家族で支え合う近居割について思い切った減額幅の拡充を行うこと
一 URの家賃改定ルールの見直しに当たっては、低所得の高齢者等が安心して住み続けられるよう十分に配慮するとともに、家賃改定による増収分を含む家賃収入は、居住環境の改善など賃貸住宅事業に優先的に充当すること。また、家賃設定に際しては、空き家が多い、エレベーターがないといった個別の特殊事情を十分に勘案すること
                                    平成27年12月14日

自由民主党公団住宅居住者を守る議員連盟  
会長 平沢 勝栄
<衆議院議員> 秋元司、井上信治、伊藤達也、大塚高司、大塚拓、大西英男、大見正、小倉將信、 小此木八郎、越智隆雄、鬼木誠、門山宏哲、神山佐市、鴨下一郎、北村誠吾、木原誠二、古賀篤、小林鷹之、今野智博、櫻田義孝、佐田玄一郎、左藤章、下村博文、菅義偉、 菅原一秀、平将明、田中和徳、田中良生、土屋正忠、とかしきなおみ、豊田真由子、 中根一幸、西村康稔、萩生田光一、葉梨泰弘、平口洋、星野剛士、松島みどり、松本純、松本洋平、村井英樹、山口泰明、渡辺博道
<参議院議員> 末松信介、中川雅治

国土交通大臣 石井 啓一 殿
国土交通副大臣 山本 順三 殿 



◆公明党国土交通部会

   居住者が安心して住み続けられる都市再生機構の賃貸住宅の実現に関する要望

 我が国の高齢化が急速に進展する中、都市再生機構の賃貸住宅は高齢者等の住宅セーフティネットとしての果たすべき役割が大きくなっている。平成25年12月24日に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」は、その役割を持続的に果たしていくためにも同機構の経営改善を図ることを求めているものである。
 一方、同閣議決定に基づき平成27年度中に同機構が行うこととされている家賃改定ルールの見直しについては、家賃の改定により年金生活の方たちが住み続けられなくなるのではないかとの不安の声があがっている。
 高齢者をはじめとして同機構の賃貸住宅にお住まいの方が安心して住み続けられるよう、次の点について特段の措置を講じていただくよう要望する。
一 家賃改定ルールの見直しにあたっては、お住まいの方を改革の名の下で追い出すことにならないようにすること。特に、年金生活者など所得が低く居住の安定を図る必要のある方は十分な配慮を行い、現在の特別措置を維持すること。
二 家賃改定による増収分を含む家賃収入は、都市再生機構の賃貸住宅団地の居住環境の向上など賃貸住宅事業に充当すること。
三 都市再生機構の賃貸住宅団地の良好な居住環境を活かしつつ、中層階段室型住棟へのエレベーターの設置などバリアフリー化を着実に推進すること。また、既存の住宅を活用して、高齢者や子育て世帯が安心して住み続けられる住宅の供給の拡大を図ること。
四 都市再生機構の賃貸住宅団地が地域の貴重な財産であるとの認識のもと、団地の居住者だけでなく、地域住民の安心の確保のため、地域の医療福祉拠点化に積極的に取り組むこと。

                                                平成27年12月17日
                                     公明党国土交通部会長 樋口 尚也
国土交通大臣 石井 啓一 殿




◆民主党旧公団居住安定化推進議員連盟

                                                平成27年12月16日
国土交通大臣 石井 啓一 様
                                  民主党旧公団居住安定化推進議員連盟
                                              会  長 大島九州男
                                              事務局長 小西 洋之

             公団住宅居住者の居住の安定に関する要望書

 独立行政法人都市再生機構は、2013年12月の閣議決定にもとづいて家賃改定ルールの見直しを進めている。その内容は、値上げ幅の拡大や改定周期の短縮、高齢者等特別措置の後退などであり、居住者からの不安の声があがっている。
 独立行政法人都市再生機構法案審議における国会決議では、家賃の設定及び変更にあたって「過大な負担とならない配慮」を求めており、また住宅セーフティネット法に位置づけられる住宅として、居住者の居住の安定が図られなければならないと考える。
 ついては下記のとおり適切な措置を講ずるよう要請する。
                              記
1. 都市再生機構の賃貸住宅については、居住者の高齢化や低所得化が急速に進んでいる実態があることから、機構法25条2項の適正な実施はもとより、4項の家賃の減免措置など安心して住み続けられるための実効ある措置を講ずること。
2. 期限が間近となった高齢者向け優良賃貸住宅については家賃減額を継続実施すること。
3. 75万戸の賃貸住宅の公共的位置づけにかんがみ、継続居住者の家賃改定については、居住者の理解が得られるよう、客観的、定期的、統一的に行うこと。
4. 居住者の居住の安定のためには、高齢者等特別措置の家賃据え置きの収入基準の変更や、敷金の追加徴収は行わないこと。
5. 平成26年4月以前から居住する継続居住者については、家賃改定ルールの見直しに伴う経過措置を実施すること。とくに改定周期は3年とし、特別措置の適用世帯はこれまでの特別措置を継続すること。



◆日本共産党国会議員団

国土交通大臣 石井 啓一 殿

     UR賃貸住宅居住者が安心して住み続けられる家賃制度の実現を求めます

                                                 2015年12月14日
                                             日本共産党国会議員団

 UR都市機構は継続家賃改定ルール見直しをすすめています。「見直し」の内容は、・値上げ幅を、市場家賃との開きの3分の1から2分の1に引き上げる、・値上げ周期を3年から2年にし、各戸賃貸借契約日ごととする、・高齢者等への家賃据え置き対象を切り下げる、・家賃増収分の修繕費への充当をやめること、とされています。これが実施されれば、低所得の居住者や、高齢で
年金生活者が多数を占める居住者の生活を破壊することは明らかです。
 2003年の都市再生機構法に対する国会附帯決議では、「居住者にとって過大な負担とならないよう家賃制度や家賃改定ルールに対する十分な配慮に努めること。特に低所得の高齢者等に対する家賃の減免や建て替えに伴う急激な家賃の上昇の抑制については、居住者が安心して住み続けられることができるよう十分配慮すること」とされています。UR住宅居住者の生活実態を踏まえた、安心して住み続けられる家賃制度が求められています。
 ついては、下記の要望を行います。
                             記
1. 家賃値上げにつながる、現在の「家賃改定ルール見直し」作業を中止し、家賃制度は居住者の所得に応じた応能家賃にすることを含めて検討すること。
2. 2013年に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(都市再生機構について講ずべき措置)を撤回し、UR住宅居住者が安心して住み続けられるよう、本来のセーフティーネット住宅として位置づけること。

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