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「全体で民営化はまったく考えていない」

全国自治協、前原誠司国土交通大臣に要請
 全国自治協の三役・部長12人は5月24日午前10時すぎから前原誠司国土交通大臣に同省大臣室で面会、事業仕分けの評価結果に反対することを表明して「UR賃貸住宅を公共住宅として存続させ、居住者の居住安定策を求める要望書」を提出し要請しました。
 この会見の取り付けに尽力した民主党・末松義規衆議院議員(旧公団居住安定化推進議員連盟会長)と自由民主党・下村博文衆議院議員(自民党公団住宅居住者を守る議員連盟幹事長)が同席しました。
 全国自治協の要請書、参加者のこもごもの訴えを受けて、前原大臣は次のように話しました。
 「仕分けはあくまで行政刷新会議に上げる前段階のものです。担当省庁と決めていくので、仕分けの判断が最終決定ではないことを、私から申し上げたいと思います」
 「一つは、全体で民営化ということはまったく考えていません。高齢者の方々がお住まいですが、民営化してしまうと民間経営面で家賃が決まってしまい、高齢者は住めなくなります。完全民営化はありえません。議論の中では東京の都心の立派な団地について、公的住宅としてやるべきかということで、個別問題としてはありますが……」
 「二つめとして、頭の痛いのは(都市機構の)11兆円の負債をどうしていくかです。しっかり考えていくポイントです。高根台団地(千葉)を見てきましたが、いい取り組みをしています。エレベーターもない団地であり、しかし建て替えすると資金が必要になり、家賃も上がってしまう。高齢者施設や住宅の入った『高根つどいの家』、ああいう取り組みはしっかりやっていきたい。病院も誘致することになっていますが、医住近接です。そういうまちづくりをしっかりやっていきます。家賃補助はこれから大切になってきます。続けていかなければならないと思っています。基本的人権であり、生活権に関わる問題です」
 「三つめは、都市機構は天下り、ファミリー企業問題にメスを入れていきます。先日国会で『伏魔殿』という言い方をしましたが、ファミリー企業など事業仕分けされても仕方ない面もあるので、検討会をつくり専門家によって検討をしているところです。どううまく民間の知恵、力、カネを借りながらやっていくか、その仕組みを考えていきます」
 「年金生活の方でも住み続けられる仕組みをつくらなければなりません。みなさんの提起については、ベーシックな問題意識を私も共有しています。耐震、バリアフリーも取り組み、医療法人、福祉法人の力も借りながら、安心して住んでいただけるような環境をつくっていく考えです」



要望書


国土交通大臣 前原 誠司 様

            平成22年5月24日  全国公団住宅自治会協議会

UR賃貸住宅を公共住宅として存続させ、居住者の居住安定策を求める要望書 

【要請趣旨】
 行政刷新会議のワーキンググループは4月26日、独立行政法人都市再生機構の事業の「仕分け」を行い、賃貸住宅事業に対し「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行、市場家賃部分は民間に移行する方向で整理」との評価結果をまとめました。
 これは76万戸、200万人近い居住者の存在と暮らし、半世紀以上にわたって築き上げてきた貴重な国民共有の財産である公共住宅の歴史的経過、現在における存在価値を正確に見ようとしないものです。
 すべてのUR賃貸住宅には市場家賃が設定されており、継続居住者の家賃は3年ごとの見直しにより市場家賃化を図る値上げを行ってきています。「市場家賃部分は民間に移行する」とは、すべてのUR賃貸住宅を民営化の対象にしようとすることではないかとの不安が生じてきています。
 また、大半の団地では高齢者・低所得者が過半数を占めるとともに、子育て世帯・中堅勤労者も居住しています。「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行」とは、どういうことになるのでしょうか。高齢者向け優良賃貸住宅はこれまで全体の6割以上を都市機構が供給してきているのですが、その役割を今後自治体が果たすことができるるかどうか、そして自治体が団地の管理を引き受けるどうか、この点も心配です。
 国土交通省では「独立行政法人都市再生機構のあり方に関する検討会」で検討を進めておられますが、私たちは、現居住者の実態、および国会の「都市再生機構法案に対する附帯決議」(平成15年5月)をふまえ、UR賃貸住宅がいま果たしている役割、そして今後「住宅セーフティネット」の一翼として果たすべき役割を明確にして、公共賃貸住宅として存続させ、居住者の居住の安定のための施策を推進することが不可欠であると考えます。
 また、子育て世代、これからの国を背負う若い世代の住宅はすべて持ち家・マンションの取得、民間市場で確保する方向に誘導するというのはあまりに乱暴な考え方であり、安心して入居し、住み、子どもを育てられる公共賃貸住宅がどうしても必要であり、それはUR賃貸住宅の重要な役割であると思います。
 事業仕分け以降、国土交通省の政務三役の先生が国会での質問に対して「UR賃貸住宅も公的賃貸住宅の一つとして位置づけられている……既存ストックの有効活用並びに適切な供給促進が必要だ」、「附帯決議を十分踏まえながら進めていく」とお答えになり、心強く思っています。
 国土交通大臣におかれましては、私たちの意とするところをお汲みいただき、以下の要請事項についてなにとぞよろしくお願い申し上げます。
【要請事項】
1.独立行政法人都市再生機構の見直しに当たっては、その76万戸超の賃貸住宅を、政府の責任のもとでの、適切な経営・管理システムによる公共賃貸住宅として、継続させるようにしてください。
2.前政権がつくった「独立行政法人整理合理化計画」(2007年12月24日閣議決定)にもとづくUR賃貸住宅の再編(売却・削減、民営化等)方針(同月26日都市機構発表)を根本的に見直し、いまの団地を積極的に活かして効果的に活用する、新政権の新たな「公共住宅再生・活用方針」をつくってください。
3.現行住宅政策によってUR賃貸住宅が「住宅セーフティネット」の一翼として位置づけられていること、そして居住世帯において公営住宅入居階層が大半を占めるようになっている実態を踏まえ、家賃制度について、高齢者や子育て世帯等が安心して住み続けられる制度に改めるための検討をしてください。
4.定期借家契約について、UR賃貸住宅の空き家募集すべてを対象とする「幅広い導入」方針は、安心して住み続けたいとの入居者の願いにまったく合致しないものであり、また集合住宅における持続的なコミュニティー形成にも重大な困難をもたらすので、取り止めてください。



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