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行政刷新会議ワーキンググループによる、UR賃貸住宅の民営化に道を開く「仕分け」に抗議し、国が責任をもつ公共住宅として継続させることを要求します
2010年4月30日   全国公団住宅自治会協議会 幹事会
 行政刷新会議のワーキンググループは、独立行政法人や政府系公益法人事業の「徹底見直し」を行う「事業仕分け第2弾」として、都市再生機構の賃貸住宅事業、関係法人との取引、都市再生事業の3分野に対する仕分けを4月26日に実施し、賃貸住宅事業については「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行、市場家賃部分は民間に移行する方向で整理」との評価結果をまとめました。また、都市機構の都市再生部門の5事業すべてを「縮減」することとし、関係法人との関係も全面的な競争化をはかるなど「取引関係の抜本的見直し」を突きつけました。
 賃貸住宅事業についてのこの評価結果は、76万4000戸、200万人近いUR賃貸住宅居住者の存在と、第一であるべき「国民の生活」のことを無視し、半世紀以上にわたって築き上げてきた貴重な国民共有の財産である公共住宅を根本から瓦解させ、民間企業に売り渡すなど、これまでの歴代政権が実施できなかった公団住宅・UR賃貸住宅の民営化の具体的実行に向けて道を開こうとするものであり、絶対に許せることではありません。
 全国公団住宅自治会協議会は、UR賃貸住宅事業についてのこの評価結果をきびしく批判するとともに強く抗議し、その内容に断固反対を表明します。
 都市再生機構法第25条の規定により「近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないよう定めなければならない」と、すべてのUR賃貸住宅には市場家賃が設定されており、市場家賃に達していない継続居住者の家賃は、3年ごとの見直しにより市場家賃化を図る値上げを行ってきています。「市場家賃部分は民間に移行する」とは、すべてのUR賃貸住宅を民営化しようとすることにほかなりません。
 「高齢者・低所得者向け住宅の供給は自治体または国に移行」と評価結果は言いますが、大半の団地では高齢者・低所得者が過半数を占めるとともに、子育て世帯、中堅勤労者も居住しています。評価結果が何を言おうとしているのか、住宅政策上からいっても意味不明、理解不能です。高齢者優良賃貸住宅は全体の6割以上を都市機構が供給してきている事実をみても、UR賃貸住宅がはたしている住宅政策上の役割を今後、自治体がはたすことができるのでしょうか。自治体はUR団地の管理を引き受けるのでしょうか。
 実現性がほとんどないことを、まことしやかな字句にしメディアに発表して大々的に報道させ、国民に重大な誤解を、UR賃貸住宅の居住者に深刻な不安を与えることは、まさに特定の考え方を一方的に押しつける弱者いじめであり、とうてい政府のするべきことではありません。
 このような異様な内容の評価結果になるのは、仕分け人の方々の発言を聞いて明白なように、天下り、役員の高額給与問題、関連企業の問題などを究明して独立行政法人制度にメスを入れることと、現に200万人近くもの国民が生活している国民生活密着の公共住宅の存在と役割のあり方をごちゃまぜにして質疑・議論したことです。そして、公共住宅制度やUR賃貸住宅にほとんど無知・無理解な仕分け人が、都市機構は解体させる、賃貸住宅は民営化させるなどといった予断をもって、歴史も政策も、いま果たしている役割も、未来のわが国を背負う国民に対する国家の住宅政策の責任といったこともおかまいなしの、自説を主張しあうことを放任し、それらの発言にもとづいて取りまとめたからです。
 仕分け人のなかには、賃貸住宅経営には多額の国費がつぎ込まれていると事実に反することを言い、「公営住宅は1000万戸ある」と荒唐無稽の数字(実際は219万戸)をあげて言い張ったり、公営住宅とUR住宅の違いさえわかっていない人がいたり、都市再生機構のあり方を議論するのはとうてい無理なレベルの方も見受けられたのです。UR賃貸住宅部門の2008年度損益計算書では総額6,570億円の収益の98%以上6,455億円は家賃や共益費など賃貸住宅業務収入であり、高齢者等や建て替え事業に対する家賃減額のための補助金(37億円)と政府補給金(11億円)、合計48億円(0.6%)しか国費が入っておらず、ほとんどは居住者からの家賃・共益費収入で経営しているのです。
 関係法人の業務についても、国の財政とまったく関係ない居住者からの共益費で実施している業務のことなどいっさい理解せず、十把一からげに槍玉にあげ、競争入札万能の主張を押しつけましたが、より良い団地管理、居住者サービスの確保のことはおかまいなしの評価結果と言わざるをえません。
 行政刷新会議は「評価結果が、当該事業に対する最終判断となるものではありません」と断っています。これは当然のことです。
 前原誠司国土交通大臣は27日の記者会見で、「この(評価)結果に基づいて改善策を講じていきたい」、「(都市機構には)10兆(円)ほどの負債があるので、いくらで売却できるのかということと、残すべき事業を何に限定するのかといった整理も必要」と述べた(時事通信)と報道されていますが、私たちはこのワーキンググループの評価結果がいかに居住者を無視した非現実なものであるかを、冷静に判断するよう前原大臣に求めるものです。
 民主党が提案し全会一致で決議した都市再生機構法の国会附帯決議は、「機構は……既存の賃貸住宅団地について、居住者の居住の安定を図ることを政策目標として明確に定め、居住者との信頼関係を尊重し、十分な意思の疎通と連携の下に住宅や利便施設等の適切な維持管理を行い、快適な生活環境の確保に努めること」を政府と機構に求めています。
 UR賃貸住宅はわが国におけるかけがえのない公共賃貸住宅資産です。日本住宅公団以来半世紀にわたって築き上げ、蓄積してきた団地管理のノウハウ、無数の居住者たちが携わり形成してきたコミュニティー活動は世界に誇るべきものと私たちは考えています。
 全国公団住宅自治会協議会は、国土交通大臣と国土交通省が今回のワーキンググループの誤った「評価結果」にとらわれることなく、76万戸のUR賃貸住宅を今後とも国民のための公共住宅として適切な管理組織とシステムのもとで継続させる方策をとりまとめるよう、強く要求するものです。
 私たちは、UR賃貸住宅を公共住宅として守るため、全国の団地での取り組みを大きく盛り上げ、政府、国会議員、地方議会などへの要請を強めます。

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