都市再生機構3年後見直しの閣議決定と
機構賃貸住宅再生・再編方針にたいする全国自治協の見解と要求
                               
                                                        
                                                     2007年12月26日
                                              全国公団住宅自治会協議会

1)12月24日に独立行政法人整理合理化計画が閣議決定されました。都市再生機構については、業務の見直しをおこなった上で、業務に則した組織形態を検討し、「3年後に結論を得ること」と決しました。この間、渡辺行革担当相をはじめ行政減量・効率化有識者会議等は、都市機構を標的に「はじめに民営化ありき」の主張に終始し、マスコミもいっせいに「公団住宅」民営化キャンペ−ンを展開しました。
  私たちはこの事態を居住の危機ととらえ、「安心して住みつづけられる公団住宅」を求め、民営化に反対する運動をしてきました。この要求は現在67地方議会の賛同を得て総理および関係大臣への意見書提出となり、各党の国会議員からは党派をこえて積極的な支援をうけることができました。無謀な「民営化」を退けたことは私たちの運動と各方面からの協力の大きな成果です。
  政府には、公団住宅がはたしている役割、居住者の実態を直視して、住生活の安定確保と向上を実現する住宅政策の充実・確立をこそ要請します。

2)2006年12月に規制改革会議は、巨額資産をもつ独立行政法人の「官業民間開放」をとなえ、とくに都市機構をあげて賃貸住宅の削減、敷地売却の明確化を答申しました。政府は本年6月、答申事項をそのまま「規制改革推進のための3か年計画」として閣議決定し、今回の機構見直し計画はその実行を求めています。「賃貸住宅の削減目標や団地ごとに建て替え、リニュ−アル、規模縮小、売却等の方向性を明確にした再編計画」の2007年内策定を指示しました。機構はこれに従い全団地の再生・再編方針を定め、12月26日に団地別の再編計画を発表しました。
  政府の「3か年計画」につぐ今回の見直し計画のこれまでにない特徴は、全国77万戸 200万人が住む公団住宅の規模は過大であるとし、戸数削減と敷地の民間売却を打ち出したことです。機構もこの方向に沿って「用途転換」、「団地再生」の名で団地丸ごとあるいは一部売却・削減をふくむ計画をたて、2018年度までに約10万戸再編に着手、既存住宅約8万戸削減を予定しています。団地の統廃合、建て替えなど再開発によって住戸削減と敷地売却は促進されます。

3)この団地再編計画には居住者も認めざるをえない正当性はまったく見いだせません。そればかりか、機構は団地「再生」をいいながら、そこを生活の基盤とする居住者との事前の話し合いなしに一方的に計画を決め、「実施には居住者の理解と協力」を求めるばかりです。こうした態度をつづけるかぎり、計画の円滑な実施は望めません。ましてこの計画は多くの居住者の移転同意を要します。計画への納得はもとより、住民参加が不可決の要件です。団地自治会は地元自治体、機構との十分な協議をつうじ計画の改変、充実を求めつつ、団地再生には参加・協力するものです。

4)都市機構は今回「3年後の見直し」が決められるなど、独立行政法人として絶えず存廃が問われ、機構の賃貸住宅に住む私たち居住者は日々居住が根底から不安にさらされています。また、こうした機構が、今後10年間を見通して実施に移すと説明する団地再編計画を居住者とその地域に押し付けること自体、きわめて無責任です。
  それとも、政府の「3か年計画」が示すように、調整困難でリスクの大きい居住者移転や敷地の整備等を機構がになった後は「売却を進め、民間の事業機会創出」に移す構想が隠されているのか、「すべての賃貸住宅を5年、遅くとも10年以内に処分する」との経済同友会の10月30日提案も想起されます。
  おおぜいの居住者の生活とコミュニティに多大の犠牲と影響をおよぼし、まちづくりの今後を左右する事業計画を提示するには、その事業主体との関係についても、責任ある政策展望を明確にすべきです。

5)団地居住者の高齢化と収入低下は顕著にすすみ、家賃負担はますます重くなっています。居住者の大半は公営住宅階層の実態にありながら、機構は中間所得層を施策対象とする市場家賃化政策をとりつづけているからです。この矛盾は高家賃団地での空き家の増大、入退去の頻発となって現われています。居住者の負担能力に配慮した家賃制度に改め、居住者の居住の安定を確保することが政府に要請する第一の課題です。
  大都市では数十倍もの応募率が示すように公営住宅は明らかに不足しています。良質で支払い可能な家賃の公共住宅の供給拡大は、とくに子育て世帯や高齢者世帯に必要とされています。本年6月に成立した住宅セ−フティネット法は、住宅確保要配慮者への賃貸住宅の供給促進と既存の公的賃貸住宅の有効活用を定めました。機構にたいして同法付帯決議は、入居者負担や入居者選考に適切な配慮をおこない、住宅セ−フティネットとしての役割充実を求めています。
  こうした現状のもとで、住宅セ−フティネットの役割をになうべき公団住宅を削減し売却する政府方針は、居住者を不安に陥れるだけではなく、国の住宅政策としても無謀といわざるをえません。

6)全国自治協は12月6日の「公団住宅の民営化反対、売却・削減阻止!居住の安定を求める2007年全国総決起集会」で、政府・都市機構にたいし次の要求を決議しました。
  1.公団住宅の民営化、売却・削減計画を中止すること。
  1.居住者の生活実態を考慮して居住の安定を保障する施策を進め、公共住宅としての役割を充実させること。
  1.都市機構法付帯決議を守り、居住者の居住の安定に万全を期すこと。                        
                                                      以 上
 

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