2009年4月3日
                                     全国公団住宅自治会協議会

        機構賃貸住宅への定期借家契約の導入・拡大に抗議します


1.都市機構が定期借家契約を導入・拡大
 都市再生機構は4月3日、定期借家契約の導入・拡大について発表しました。
 それによると、2009年度において、「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」のストック活用類型の団地から全国32団地を選定して約3万戸を、団地再生事業等を予定している団地の戸数に加え、全賃貸住宅戸数の約2割を導入対象の団地とし、新規入居者募集については、すべて定期借家契約を結ぶとしています。
 定期借家の契約期間は5年、期間中の家賃改定はなく、期間満了の際機構の都合による再契約もありうるとする内容です。機構は、普通借家契約との相違にはふれず、この3点以外に「特に変わることはありません」と付言しています。

2.全国自治協は定期借家制度に一貫して反対
 定期借家契約の提起は、1995年3月の閣議決定「規制緩和計画」に始まり、曲折を経て1999年12月、議員立法により「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」が成立、借地借家法を一部改正して、同法28条の正当事由要件を排除した借家契約を導入しました。
 私たち全国公団住宅自治会協議会は当初から一貫して定期借家制度に反対し、1998年6月の第25回定期総会では「借家人の権利を弱める『定期借家』制度創設、正当事由制度の後退・廃止に反対する」方針を明確にし、同年8月には「借地借家法改正法案に対する全国自治協の見解」を発表しました。
 その後、都市基盤整備公団(当時)が2003年12月、建て替え事業にともなう補充停止住宅について定期借家契約の活用を提案してきた際も、全国自治協は「公団住宅への定期借家契約導入の試行実施についての見解」(04年1月19日)を示し、反対を表明しました。あわせて、建て替え予定団地での空き家対策に「限定する」というならば、文字どおり限定的な「取壊し予定建物賃貸借契約」を活用するよう提案しています。
 定期借家契約は、借家人保護の要をなす「正当事由」制度の廃止論が、90年代に強まった「規制緩和」の流れに力を得て一部結実したもので、借家権を骨抜きにしていくねらいは明白でした。私たちは、この導入が居住の継続・安定をおびやかし地域コミュニティを破壊に導くことを指摘し、「当面は限定的」活用としてはいるがそれは今後限りなく拡大されていく糸口になることを警告して、反対してきました。

3.居住者の権利を奪い公団住宅売却・削減を促進
 そして今回、2008年12月22日に規制改革会議が第3次答申のなかで公団住宅の「部分民営化」手法を提起するとともに、機構が2009年度にとるべき措置として「既存賃貸住宅への新規入居者との賃貸借契約は、建て替え予定の団地以外においても、定期借家契約を幅広く導入する」ことを要請し、3月31日、政府はそのまま「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」において閣議決定しました。本年4月1日にはじまる機構第2期の中期計画においても「ストック量の適正化」=住戸削減とともに「定期借家契約の幅広い導入」の方針を打ち出し、数値目標も掲げています。
 3月27日の全国自治協と機構本社との定例懇談会で、定期借家契約の幅広い導入・拡大の目的、必要性について質したところ、「政府決定により」以外に説明のことばはなく、実施主体としての無責任さをさらけ出しました。政府決定にもその目的、理由は示されず、規制改革会議の第3次答申が次のように説明しています。
 「普通借家契約と異なり、定期借家契約であれば期間満了時の家賃改定、退居の要請など柔軟に対応が可能であり、貸主である機構の整理合理化に向けても資する契約形態である。また、家賃改定等に伴う様々なトラブルで機構は裁判など法的措置を多数行っているが、こうしたトラブルについても、期間の定めのある定期借家契約であれば、多くの問題は解消し、紛争処理コストも大幅に下がる。……こうした対応が実現すれば、機構の管理運営適正化や整理合理化に一層の進捗をもたらし、国民利益の向上が望める。」
 「良質な賃貸住宅の供給促進」を名目に導入した定期借家契約は、当初から私たちが指摘し、財界・不動産業界のねらいどおりに、「借家人追い出しが目的」だったことは、機構方針のもとをなす規制改革会議答申も明言しています。
 機構は、建て替え予定団地の空き家対策に「限定」という理由を反古にして、定期借家契約導入の範囲と目的を一変させてきました。公団住宅全居住者の借家権に対するいっせい攻撃の始まりといえます。

4.定期借家契約拡大は公団住宅解消への道
 機構は「限定的な試行」といい、借地借家法も普通借家から定期借家への切り替えについては「当分の間」ハードルを設けていますが、そのこと自体が定期借家契約への懸念、借家人にとっては明らかに不利益と見なしている表われです。しかし、定期借家契約がねらう目的から強権的にこれを拡大し、正当事由制度の廃止をめざし、借家権を最終的に無きものにする動きはやまず、強めるでしょう。
 居住継続への期待、借家権の継続性が否定された契約のもとでの市民生活、営業は考えられません。ましてその地域とのかかわり、コミュニティ形成への参加を期待することは不可能です。居住も営業も本質的に継続保障が基盤であり、定期借家は逆に居住、営業の否定、コミュニティを破壊に導くものです。
 定期借家入居の場合、市況変動のなかで5年間家賃改定をしない特約、契約終了時に移転費用の給付、住宅あっせん等の移転補償のない退居は、入居当初の「合意」にかかわらず、居住の本質に矛盾し紛争が予想されます。また、集合住宅団地において借家契約内容の異なる居住者を混住させることから生じうる管理上の混乱、住民自治とコミュニティ形成にもたらす困難など、機構自ら招く新たな諸問題に管理者としてどう対処し責任をとるのか、問われます。
 公団住宅の売却・削減方針とそのための定期借家契約拡大は、社会的に弱い立場の国民の居住の継続・安定を図るべき公共住宅の本旨に逆行するものであり、公団住宅解消への道といわざるをえません。
 全国自治協はこれに反対の立場を表明して機構に抗議し、居住者の居住の安定と権利を守るために運動を展開していきます。  

                                                              以 上          

                        
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機構賃貸住宅への定期借家契約の導入・拡大に抗議!
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