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閣議決定に基づき経営改善へ向けて取り組み
都市機構の第三期中期目標と中期計画
 都市再生機構は、閣議決定「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(2013.12.24閣議決定)により特殊会社化・民営化ではなく、中期目標管理型の法人とすることが決まりました。それに基づき都市機構の2014(H26)年度から2018(H30)年度までの5年間に渡る第三期中期目標と第三期中期計画が新たに策定・発表されました。
 第三期中期目標は国土交通省が策定、第三期中期計画はその目標に合わせて都市機構が作成し、独立行政法人評価委員会都市再生機構分科会の審議を経て決定されました。
 同会では委員から「収益性が前面に出ている内容で驚いた。『住宅セーフティネット』として違和感があり、不安が先に立つ」「エリア単位の統廃合などと大胆な書き方をしているが、団地は地元でも大事な資源・資産である」「このような内容(団地再生・統廃合)になるのなら、居住者のコミュニティ、特に高齢者には配慮が必要である」等の意見が出されるなど多くの問題点が含まれています。

◆「財務構造の健全化」が最優先課題
 
 昨年、行政改革推進会議・独立行政法人改革等に関する分科会第4ワーキンググループで行われた機構改革の議論は、機構が「多額の有利子負債を抱えている」ことや、「繰越欠損金が残っており財務構造が脆弱である」ことなどを挙げ、金利上昇による利払いリスクや人口減少による家賃収入の下落など将来に深刻なリスクがあるとの認識から出発しています。
 その結果、「財務構造の健全化」が最優先課題とされ、第三期中期計画と同時に、第三期から第六期が終了となる平成45年度までの長期にわたる「経営改善に向けた取組みについて」が発表されています。もう1つの柱は、「民間事業支援」の強化・徹底です。

◆収益の確保は賃貸住宅事業で
 まず財務構造の健全化のための経営改善に向けた機構の取り組みの第1は、賃貸住宅ストックの再生・再編の加速化です。平成30年までに約3万戸を削減する、平成26年度中に具体的な実施計画を作成することとしています。
 第2に、修繕コストの削減。小規模修繕を中心に3年間で10%の削減を実施することなど徹底したコスト削減を実施する。
 第3に、家賃設定方法の見直しを挙げ、稼働率を上げるために募集家賃の見直し(引き上げ、引き下げ)を機動的かつ柔軟に実施すること、継続家賃改定ルールを見直すことを挙げています。
 継続家賃改定ルールの見直しでは、改定周期の短縮や引き上げ幅の拡大等が中期計画にも明記され、すでに募集家賃の「機動的かつ柔軟な」設定に着手し、団地によっては5%値上げするなど家賃収益の拡大を図っています。このように経営改善の具体的な課題は、全て賃貸住宅事業が対象です。
 賃貸住宅の管理については、第一期の中期目標・計画では、「国民共有の貴重な財産であり、居住者の居住の安定を図りつつ、適切な維持管理を行う」としていましたが、第三期では「UR賃貸住宅の管理水準の維持・向上に努めながら、業務の効率化を図り、賃貸住宅管理コストを縮減するとともに、家賃設定方法の見直しによる稼働率の維持向上等適切な家賃収入の確保を図る」と変化しています。
 「民営化」の文字が消えても、収益拡大最優先の賃貸住宅管理、家賃設定等すべてにおいて民間事業手法をとるという方針は、公共的な機能を投げ捨て「営利企業体」化することです。

◆20年先を見据えた経営の数値目標

 数値目標としても、第三期が終了する平成30年までに1,680億円の繰り越し欠損金を解消することや、有利子負債削減に資するキャッシュフロー(収支後手元に残る資金の流れ)を重視する経営に転換するとして、営業キャッシュフローマージンという新たな指標を使い、平成30年度、35年度=43%、平成40年度=48%、平成45年度=50%とする目標を掲げました。
 また、平成45年度までに(空き家を減らして)稼働率を5%アップし、有利子負債残高を3兆円削減するとしています。
 機構は「20年間を見据えて、第三期の5年間は団地の付加価値向上のための投資を積極的に行う」と説明していますが、「戦略的な」「機構の経営を悪化させないよう留意の上」「費用対効果を勘案した効率的な」「収益改善にも資する」等の言葉が様々なところに並べられ「家賃収益拡大のため、収益が見込める団地への投資」となる恐れがあります。

住宅セーフティネットの充実を図るとは?
 機構賃貸住宅の役割について第三期中期目標では、「超高齢社会に備えた医療福祉拠点の整備など良好な居住環境を備えた賃貸住宅の確保、居住者の居住の安定を図り、公的賃貸住宅としての重層的かつ柔軟な住宅セーフティネットの充実を図る」としています。  具体的な取り組みとしては、・医療福祉拠点の整備に着手する=先行して20団地、平成30年度までに100団地、・全ての団地において高齢者の見守りサービスを提供する、・多世代の交流・ミクストコミュニティの形成と居住者の居住の安定確保を挙げています。
 「医療福祉拠点」や「見守りサービス」は、機構が主体となって事業を行うわけではなく民間事業者との連携であり、「ミクストコミュニティの形成」については、近居制度や優遇倍率、地域優良賃貸住宅制度の活用で子育て支援を行うといった内容です。
 少子高齢化、低所得化が進む中で本当に求められている「住宅セーフティネット」としての具体的な施策は全く見えてきません。
 コミュニティ広場、コミュニティカフェやサロンの設置など高齢者が身近に立ち寄れるような場の提供を挙げていますが、機構自らが行うのではないため、自治会を中心とした団地コミュニティの継続・維持・発展こそが重要です。

ストック再生・再編を加速―削減目標設定
 中期目標には、ストックの再生・再編を加速することが謳われており、「個別団地ごとの特性に応じて定める基本的類型に基づくストックの再生・再編等の推進及び団地別経営管理の徹底、定期借家契約の活用、民間等との連携手法の多様化、複数団地の統合・再配置などにより、再生・再編を加速すること。また、団地再生・再編に伴う家賃減額措置については、必要な見直しを行うこと」としています。
 平成26年度中に、すべての団地を対象に集中投資する団地や統廃合を図る団地等を明確にするべく具体的な実施計画を策定する。さらなる経営改善のために、中期目標期間中に、将来需要等を総合的に考慮したストック再編・削減目標を設定、「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」の内容を見直すとし、平成30年度までに約10万戸の再編に着手して5万戸削減する目標が記されています。
 東京都心部の高額賃貸住宅(約13,000戸)は、買い取りオプション付きのサブリースで民間に委ねることとし、民間の事業手法を賃貸住宅事業全体に活かすとしています。
 団地の統廃合・削減等は、「居住者の居住の安定を確保しつつ」と前置きしていますがどのように確保するのか、また「家賃減額措置の見直し」も大きな問題です。
 団地別経営管理や整備方針の違いによって機構の対応は団地ごとに違ってくることが予想され、団地での具体的な現れを見逃さず運動を進めることが大切です。平成26年度中にとされた具体的な実施計画策定については、検討の段階から自治会が参加していくことが重要です。
 私たちは、閣議決定と新たな情勢をしっかりと捉え、定期総会などで論議を深め運動の方向に確信を持ち、公共住宅としての住まいを守る活動を進めていきます。
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