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世帯主65歳以上70.6% 年金受給世帯7割超
206団地・8万172戸が回答

第12回団地の生活と住まいアンケート集計結果概要
 全国公団住宅自治会協議会は今年9月、「第12回団地の生活と住まいアンケート」調査を実施しました。その結果を発表します。
 全国206団地自治会でが取り組まれ、20万7,730戸へ配布、回収戸数は8万172戸、回収率38.6%でした。このアンケートは1987年から3年ごとに行われ、12回目の今回もこれまで同様大規模なものとなり、居住者の生活実態と要望を表す貴重なものとなりました。この集計結果を各団地自治会・自治協で活用していただくともに、全国自治協はアンケートで明らかになった生活実態と要望を基に、各党・国会議員、国土交通省、都市機構等へ要請していきます。
 今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、自治会活動はスタートからその影響を受け、コミュニティ活動、夏祭り、防災訓練などイベントの開催等は中止・延期を余儀なくされました。この調査の実施も心配されていましたが、ご協力いただいた自治会役員、居住者の皆さんに心から感謝申し上げます。


 世帯主の高齢化はさらに進み、年金生活で世帯収入低下の実態が明らかに。「家賃負担が重い」と不安を抱えながらも「公団住宅に住み続けたい」という希望が引き続き多く、UR賃貸住宅が住宅セーフティネットとして重要な役割を果たしていることがいっそう鮮明になりました。
 世帯主の高齢化はさらに進み、65歳以上が70.6%(前回2017年68.4%)となりました。うち75歳以上は42.7%(同38.5%)。男性世帯主が減り女性世帯主が増加38.4%(同36.7%)。また1人暮らしが増え44.1%(同40.8%)。長年住み続けている世帯と新たな入居者とで高齢化はいっそう進んでいます。一方、子育て世帯は引き続き減っています。
 世帯収入は収入階層をⅠ~Ⅴ分位に分け、第Ⅰ分位をさらに四つに分け調査しました。第Ⅰ分位239万円未満は48.7%と約半数に上り、354万円未満の第Ⅱ分位は21.5%。第Ⅱ分位以下の世帯が7割を占めています。 家賃負担が「たいへん重い」と感じている世帯が34.8%、「やや重い」世帯が39.9%を合わせ7割を超える世帯が家賃負担が「重い」としています。「高齢者世帯の減額を」望む声が一番多く45.7%、続いて「値上げせず据え置きを」が43.2%でした。世帯収入は「給料だけ」18.3%(同18.5%)、「年金だけ」は45.7%(同46.3%)でした。「年金だけ」と「年金とパート・アルバイト」11.7%、「給料と年金」12.4%を合わせると69.8%、じつに年金受給世帯が約7割を占めます。年金受給世帯でも24.1%の世帯が働いて収入を得ており、年金だけでは生活できないのが実態、医療費や介護保険等の負担も大きく、高齢者の生活は厳しさを増しています。入居開始50年以上の団地が多くなり、36年以上居住世帯が35.0%、一方平成27年以降に入居した世帯が21.3%と増えてきました。
 「公団賃貸住宅に住み続けたい」は75.8%(同74.0%)と増加。民間賃貸に入居できない高齢者の新入居が増加しています。住んでいて不安は59.4%が「家賃値上げや収入の減少で家賃が払えなくなること」、42.4%が「建て替え・集約等で移転を求められる」と回答。このように不安が増しても公団住宅に安心して住み続けられることを望んでいます。
調査および集計の方法
 1.原則として2020年9月1日から9月30日までの1カ月間をアンケート用紙の配布・回収の統一実施期間とし、全国自治協に加入している団地(UR賃貸住宅・一部自治協非加盟団地を含む)で実施しました。
 2.各団地自治会が調査主体となり対象を当該団地の居住者世帯とし、団地の全戸に調査用紙を配布して回収しました(空き家は原則配布対象から除外)。各団地自治会は回収に当たり、プライバシー保持に留意し、各戸へ配布した封筒に記入したアンケート用紙を入れ、封をし提出してもらうなど、居住者が安心して回答できるように配慮しました。
 3.集計は全国的に統一した基準・方法により各団地自治会で基礎的集計を10月10日までに行い、その結果を基に各地方自治協が集計、全国自治協で全体集計を行いました。



世帯主の65歳以上が70.6%、高齢化さらに進む


 世帯主65歳以上が70.6%(2017年68.4%、2014年63.8%)を占めており、急速な高齢化は引き続き進んでいます。うち70歳以上は60.2%(2017年55.0%、2014年50.2%)となっています。長年住み続けている世帯や民間賃貸住宅に入居できない高齢者世帯の新たな入居などにより高齢化はいっそう進んでいます。
 一方、子育て世帯は引き続き減っています。第1回の調査(1987年)では86.0%あった「50歳代以下」は今回21.6%(2017年22.4%)まで減少しました。団地は広場や遊具、緑豊かな安心して子育てできる環境が揃っています。こうした環境を活かし、団地のコミュニティの維持と活性化のため、子育て世帯が入居しても住み続けられる家賃や制度の構築が望まれます。




昨年(2019年)の世帯収入…第Ⅰ分位約5割、約7割は354万円未満


 この問いで特筆すべきことは、世帯の収入額という質問にもかかわらず、これまでと同様に93.8%という高い回答率になっていることです。
 世帯収入については収入階層を総務省統計局の2019年度家計調査・家計収入編(総世帯)によってⅠ~Ⅴ分位に分け、さらに第Ⅰ分位を四つに細分化して調査を行いました。このように細分化することで、より世帯収入の実態がよく分かります。
 第Ⅰ分位239万円未満は48.7%と約半数に上ります。354万円未満の第Ⅱ分位は21.5%。第Ⅰ分位と第Ⅱ分位を合計すると70.2%となり、世帯収入354万円未満の世帯が7割を占めています。




年金受給世帯約7割、「年金だけ」が45.7%に


 「給料だけ」が18.3%(2017年18.5%、2014年19.2%)と減り続けており、「年金だけ」が45.7%(2017年46.3%、2014年42.9%)と増える傾向です。「年金だけ」、「年金とパート・アルバイト」11.7%、「給料と年金」12.4%を加えると計69.8%となり、年金受給世帯は約7割を占めます。年金額は減る一方で、24.1%の世帯が働いて収入を得ており、年金だけでは生活できない実態も現れています。




家賃負担が「重い」 74.7%


 現在の家賃について「たいへん重い」と感じている世帯は34.8%、「やや重い」と感じている世帯は39.9%、両方を合わせると74.7%と実に7割を超える世帯は家賃負担が「重い」と感じています。「普通」は21.2%、「重くない」はわずか1.1%です。
 各地方自治協ごとに見ると、「重い」と感じている世帯が多いのは、東京23区では83.7%、東京多摩79.5%、福岡80.4%です。また建て替え後団地では81.3%が「重い」と感じています。




「公団賃貸住宅に住み続けたい」75.8%


 今後の住まいについて、「家賃負担が重い」などの不安を抱えながらも、引き続き「公団住宅に住み続けたい」という回答が75.8%(2017年74.0%、2014年71.0%)と多くなっています。「公営住宅に住み替えたい」の7.6%は公団住宅の高家賃が原因であり、公共住宅での継続居住を83.4%が希望しています。
 公営住宅は新規建設がなくなり募集が減少しているため応募倍率が高く、東京都では数十倍から百倍にもなり公営入居を希望する世帯は諦めざるをえないのが現状です。また高齢者にとって住居の移転は非常に困難であり、終の棲家として住み慣れた団地に住み続けたいという希望は強くなっています。「持ち家・マンションを購入」は4.6%と減少しました。




住んでいて不安なこと…「家賃が払えなくなること」「建替え・集約等で移転を求められること」(複数回答)

 住んでいて不安・不満に思うことは「家賃値上げや収入の減少で家賃が払えなくなること」が59.4%と一番大きな不安となっています。給料で収入を得ている比較的若い世帯も、コロナ禍で職を失ったり、収入が減っている世帯は少なくありません。またパート・アルバイトなどの不安定雇用の世帯も多く、年金受給世帯も年金だけでは生活できず、「働いてはいるがいつまで働けるか不安」という声も挙がっています。改定周期の短縮と引き上げ幅の拡大を決めた新しい継続家賃改定ルールの下で家賃値上げが行われ、継続家賃改定(値上げ)が続いている東京23区自治協の集計では65.2%になりました。
 二番目の不安は、「建て替え・集約・売却等で移転を求められる」が42.4%(2017年41.9%)です。2018年12月、機構は賃貸住宅についての2033年までの新たな方針として「UR賃貸住宅ストック活用・再生ビジョン」を発表しました。2033年までに現在約72万戸の住宅を約65万戸まで削減する方針は変えていません。1980年以前に管理開始した団地を「ストック再生」に位置づけ、対象をこれまでの約13万戸から約45万戸に拡大しました。これにより40年代団地はほとんどが「ストック再生」とされ、機構は戸数削減、敷地売却などの集約事業を前面に着手を急いでいます。
 住み慣れた団地に住み続けたいとする居住者が圧倒的に多いなかで、団地内の移転先も確保できないままに事業着手の説明会などが行われ、高齢者に移転が求められています。機構は「団地再生」を前提に自治体と協定を締結するケースも見られ、居住者の「団地の建て替え・集約・売却等で移転を求められること」への不安・不満が大きくなっています。
 次に「住宅や設備が古いこと」が34.8%(2017年33.1%)と少し増えています。管理開始50年を経過する団地が増え、長年住み続けている居住者の住宅の設備の改良がなかなか進んでいないことの現れです。
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