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第11回団地の生活と住まいアンケート集計結果の概要

世帯主65歳以上68.4% 年金受給世帯7割超
218団地・8万3,138戸が回答

 全国公団住宅自治会協議会は9月、「第11回団地の生活と住まいアンケート」調査を実施しました。その集計結果がまとまりましたので発表します。
 11回目となる今回も、地方自治協と各団地自治会の努力により218団地で取り組まれました。アンケート用紙の配布総数21万4,093戸、回収戸数8万3,138戸、回収率38.3%、これまでと同様に大規模な調査となりました。集計結果は公団住宅居住者の実態と要望を現す貴重なデータです。 「家賃負担が重い」と回答する世帯が増え、「家賃値上げや収入の減少」に不安を感じている世帯は依然として6割を越えています。「公団住宅に住み続けたい」と希望する世帯が引き続き多く、住み慣れた団地に住み続けられるよう住宅セーフティネットとしての役割強化が強く求められています。
・世帯主の高齢化と単身世帯の増加
 世帯主の高齢化はさらに進みました。世帯主65歳以上が68.4%(前回63.8%)を占めており、急速な高齢化が引き続き進んでいます。うち70歳以上は55.0%(前回50.2%)になりました。また、男性の世帯主が減り58.9%。女性の世帯主は引き続き増加して36.7%に。「一人住まい」は40.8%まで増えています。
・世帯収入第・分位以下は7割、家賃負担が重いは8割
 世帯収入について、収入額を総理府統計局の2016年度家計調査・家計収入編(総世帯)により5分位に分け、さらに第・分位を4つに細分化して調査を行いました。世帯収入第・分位は49.3%と約半数に上り、第・分位は20.8%、これらを合計すると70.1%と第・分位以下の世帯は7割を占めています。そのため家賃負担についての回答は「たいへん重い」が37.9%、「やや重い」が39.1%になり、8割近い世帯は家賃の負担が「重い」と感じています。
・年金受給世帯が7割を超える
 世帯の収入が「年金だけ」と答えた世帯は46.3%と増え、「年金とパート・アルバイト」11.4%、「給料と年金」12.5%を加えると合計で70.2%となり、年金受給世帯は実に7割を超えました。
・公団住宅に住み続けたい
 「公団住宅に住み続けたい」という回答は今回もたいへん多く74.0%でした。高齢化で移転が困難となり、終の棲家として住み慣れた団地に住み続けたいという希望が強く現れています。住み続けていく上で一番の不安は「家賃値上げや収入の減少で家賃が払えなくなること」で63.6%、「建て替え・集約・売却等で移転を求められること」が41.9%となりました。


●65歳以上の世帯主が68.4%

 世帯主の高齢化がさらに進んでいます。
 世帯主65歳以上が68.4%(2014年63.8%、2011年56.6%)を占めており、急速な高齢化が引き続き進んでいます。うち70歳以上が55.0%(2014年50.2%、2011年43.0%)となりました。長年住み続けている世帯の高齢化が進み、さらに民間賃貸住宅へ入居できない高齢者の入居が増えているからです。また、エレベーターのあるバリアフリー住宅を求めての入居や、子ども世帯の近くにと入居する「近居」、戸建て住宅やマンションを処分して団地に入居してくる高齢者も多く見られます。
 一方、子育て世代は引き続き減っています。第1回(1987年)の調査で一番多かった30歳代の31.1%は今回3.7%に減少し、同じく86.0%を占めた50歳代以下の世帯は22.4%まで減少しました。団地は安心して子育てできる広場や遊具、緑豊かな環境が揃っています。そうした環境を生かし、団地のコミュニティの維持と活性化のためにも、子育て世帯が入居できて住み続けられる家賃や制度等の施策が求められます。



●昨年(2016年)の世帯収入…約7割が353万円未満

 昨年の世帯収入についての問いで、特筆すべきことは収入額の質問にも拘わらずこれまでと同様に93.5%という高い回答率となっていることです。
 収入額区分は、総務省統計局の2016年度家計調査・家計収入編(総世帯)によりⅠ~Ⅴ分位に分け、さらに242万円未満の第Ⅰ分位を4つに細分化して調査を行いました。このように分けることによって、より世帯収入の低下の状況がよく分かります。統計による全世帯の世帯収入が減っていることを反映して、第Ⅰ分位に区分する金額も下がりました。前回の2013年度の調査では「251万円未満」でしたが、今回2016年度の調査では「242万円未満」となっています。また第Ⅴ分位は、前回は「735万円以上」でしたが、今回は「729万円以上」になりました。
 第Ⅰ分位242万円未満は49.3%と約半数に上り、第Ⅱ分位20.8%と合わせると70.1%、世帯収入353万円未満の世帯は7割を占め、経済的に厳しい居住者の生活実態を浮き彫りにしています。



●年金受給世帯7割超え、「年金だけ」が46.3%に

 世帯収入の主な内容については、「給料だけ」の回答は18.5%と、前回(2014年19.2%)、前々回(2011年22.6%)と比較すると減り続けています。
 「年金だけ」という回答は46.3%(2014年42.9%、2011年39.1)と増え続けています。「年金とパート・アルバイト」も11.4%(2014年10.3%、2011年9.9%)と増えています。「給料と年金」の12.5%を加えると年金受給世帯は合計で70.2%(2014年66.2%、2011年61.7%)となり、前回より4ポイント増加しました。
 頼りの年金額はマクロ経済スライド方式の導入により、減る一方で生活はたいへん厳しくなっているのが実態です。



●家賃負担が「重い」 77.0%

 家賃の負担感については、「たいへん重い」と感じている世帯が増え続け37.9%になりました。「やや重い」と感じている世帯は39.1%、合計すると77.0%(2014年72.6%、2011年69.7%)もの世帯が家賃負担は「重い」と感じています。「普通」は20.0%、「重くない」はわずか1.0%でした。世帯主の高齢化と低所得化が進んでいること、継続家賃の繰り返し値上げが数字に反映されていると思われます。
 地域別に見ると、家賃負担が「重い」という回答が一番多いのは、家賃の高い東京23区で87%が「重い」と回答しています。次は東京多摩で82.4%です。また、建て替え後団地では83.6%が「重い」と回答しています。戻り入居者には一定の家賃措置があるものの、10万円以上を払っている世帯が4割近くになりました。



●「公団住宅に住み続けたい」74.0%

 今後の住まいについてどう考えているか伺いました。「家賃負担が重い」など不安が大きいにも拘わらず、引き続き「公団賃貸住宅に住み続けたい」という回答はこれまで同様に多く74.0%(2014年71.9%、 2011年78.0%)でした。高齢者は移転が困難なため、終の棲家として住み慣れた団地に住み続けたいという思いが強く出ています。
 「公営住宅に住み替えたい」は8.9%(2014年10.4%、2011年9.7%)と少し減少しましたが、公団住宅や公共住宅にと考えている世帯は82.9%に上ります。「持ち家・マンションを購入」は毎回減少し5.1%でした。
 公営住宅が新規に建設されず減少しているため、応募倍率が東京都などでは数十倍から百倍と高くなっており、家賃負担が重くて公営住宅に住み替えを希望する世帯もあきらめざるをえないのが現状です。また、収入実態から言っても公営住宅へ入居できる世帯層が多くなっており、公団住宅が公営住宅の代わりを担っていることになります。公営住宅に入居できない公営住宅入居層の居住者に対しては、公営住宅並み家賃に引き下げを求めていきます。



●公団住宅に住んでいて不安なこと…家賃が払えなくなること、集約等で移転を求められること
(複数回答)
 公団住宅に住んでいて一番大きな不安は、「家賃値上げや収入の減少で家賃が払えなくなること」で63.6%でした。新しい継続家賃改定ルールの下、個別の契約日に合わせた家賃値上げ実施は大きな不安となります。また、年金受給世帯が7割に増加し、その頼りの年金が減額され続けていること、働いても非正規雇用等のため収入が伸びないこと等が影響していると考えられます。
 二番目に多かった不安は、「団地の建て替え・集約・売却等で移転を求められること」で41.9%です。2013年の閣議決定で「収益性の低い団地の統廃合の加速」を求められた機構は、「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」の実施計画(2015年3月)をつくり、2018年度中に個別団地ごとの整備方針を出すとしています。収益性の観点から、全団地を「戦略的に検討し収入増を図る団地」と「エリア単位の団地再生や団地単位の集約等により規模縮小を検討する団地」とに分ける方針です。「団地再生」「用途転換」「譲渡・返還」とされた団地だけでなく「ストック活用」となっている団地にも不安は広がっています。実際に、これまで「ストック活用」とされていたところが、突然団地ごと
民間に売却される事態が起きているからです。
 次は「住宅や設備が古いこと」で33.1%、管理開始50年を経過する団地も増えており、長年住み続けている居住者の住宅設備の改善がなかなか進まないからです。
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